2018年5月27日日曜日

サマー・インターン (その2 実践編)

前回に引き続き、実践編として、サマー・インターンでの経験や学びについてまとめておきたい。

Asia Real Estate Trekが提供してくれたサマー・インターンへの門戸を開き、実際に働いてみるために、早速行動を開始した。

実は、外資系金融(GS、Morgan Stanley、JP Morgan etc)やコンサル系(ボスコン、マッキンゼー)は、早速一年目の秋に開催されるボストン・キャリアフォーラムでインターンが決定されることが多い。
これは海外からのサマー・インターンが卒業後の採用を決めるうえでの登竜門となるからだ。

僕の場合は、まだ不動産を通じてのヴィジョンを広げたい時期だったし、様々なオプションを見ておきたかったのでボストン・キャリアフォーラムは見学する程度に留めた。ただし気づきも多く、いわゆるReal Estate Private Equityについては少数精鋭で中途採用が多いことから新卒に重きをおいているボスキャリで有用な情報を得るにはいたらなかったのだ。
逆に自分の意志を固めるうえでもよい機会だった。ネームバリューによらない仕事の仕方をしたいということ。即戦力として責任ある立場でのコミットメントがしたいこと。そして自身の行っている建築と不動産活動を加速してくれる仕事であること。


話は戻り、早速Trek中にネットワーキングできた各社Managing Directorと、面談やランチのセッティングをさせていただき、結果的にMorgan Stanley Capital KKとAngelo Gordon & Co LLC、Phoenix Property Investorsからサマー・インターンのオファーをいただいた。

実際にはMorgan Stanley Capital KK (MSC)にて約10週間、Angelo Gordon(AG)にて2日間のインターンを行った。

各企業の特徴は(その1応募編)で記載した通り。
言えるのは各3社のMDは皆、リーマンショックを経験し、なおかつ今でも組織をリードしているため、非常に人格者であり、そして大胆さと慎重さを併せ持っていながら気前がよい、ということ。またそれぞれに投資に対しての得意な戦略があるというのも面白い。



応募についてのTipsは下記
・一年目で習得したProforma構築スキルを表すマテリアルを先方と共有する

・Investment Memoを作成した資料を共有する
(特にRick PeiserのFinal Projectがよいだろう)

・ランチはチームとの相性を図るもの。態度をはっきりと決めてゆくと同時に自然体で

・Aqiuisition、Fund Raising、Asset Managementなどのチームの役割を頭に入れる

・インタビューは英語と日本語両方なので、どちらでも答えられるように

・コールの場合は立って電話するのがおすすめ。ポジティブな気持ちが伝わる



Morgan Stanley Capital KK(MSC) 編

具体的に関わったディールの名前は挙げられないので、概要のみまとめておく
ちなみにディールの最中はコードネームで呼ばれている。
MSCの特徴はAquisitionチームとAsset Managementチームが別れていてそれぞれ10人と15人程度、またバックオフィスから構成される。



各ディールの流れは下記(REPEほぼ共通)
Underwriting→ICOMM(投資委員会プレゼン)→Acquisition→Renovation or Conversion→Lease out→Property Management→Disposition



・某ホテルのリノベーションとブランド誘致
40年以上経つかなり古びたホテルを買い取り、耐震改修を行いつつ、全面階層を行い、海外ホテルブランドを誘致するディール。
Total Capitalizationは約60MM USD。当然ながら建築系バックグラウンドを活かすべきプロジェクトだったため、充実感を持って担当させていただいた。

・某ショッピングセンター
近郊都市の駅前に位置するショッピングセンターのアセットマネジメント段階。改装も同時に行いつつ、いかに有力なテナントを目標賃料で誘致するかが鍵。
Total Capitalizationは約80MM USD。アセットマネジメントチームの中で動かせていただきつつ、リーシングと管理がいかにディールの中で大切か、そして機会創出についても実は「床」の動きを追いかけることで、発見できるものがあることを学ぶ。

・某社宅、オフィス、賃貸住宅ポートフォリオ
都心部および核都市における混成型のポートフォリオ構築のためのUnderwriting。こちらは初めての本格的なAcquisitionに向けたUnderwritingを担当させていただき、異常にエキサイティングな投資委員会も経験させていただいた。各物件をポートフォリオに入れるか否か、どういったリスクをとるのか、どのアップサイドの可能性を見るのかなど、様々な視点を学ぶ。

・Final Presentation
こちらは、各インターン生が最終日に経過の成果を発表するうえでも重要となるプレゼンテーション。僕の場合は以前より興味があり、自身でも実践していたModern Disruptorとの協働の可能性についてまとめた。いわゆるAirbnbやWeworkを保有不動産で展開した場合、ということだ。集大成としてInvestment Memo形式でまとめることができたため、Morgan Stanleyとの共同研究のような形でいい成果が出た。ただし、実際にMSCのファンドに組み込むとなるとVolatilityが高かったり法的グレーゾーンが多いこと、またCapital Marketではまだこういった投資商材が確立されていないため、まだ実践に組み込むこと難しい判断だった。


Angelo Gordon & Co. LLC(AG) 編

こちらも具体的に関わったディールの名前は挙げられないので、概要のみまとめておく
こちらは短期間での経験となったため、今までのディールで実際につくりあげた物件を東京近郊に限ってツアーガイドしていただきながら、また少し建築的視点からのAdd Valueについて関わらせていただいた。また、ボストンに戻ってからもメールベースでのヘルプを行った。
AGのチームの特徴はなんと言っても少数精鋭。そしてアウトソース先と上手に連携しながら、Add Value思考のディールを得意とする。各ディール・オフィサーはMy Baby Projectという表現にみられるように、全ての面倒を自身の最良により見る。


プロパティ・ツアーでは代表的なディールである3物件を回った。どれもAGの投資フィロソフィーを示す非常に面白い事例だ。

・都内某商業ビル
プランテックとともに外装も一新し、そして道路付けを少し変更してのテナント面積確保というウルトラCを行った物件を始めに見せていただいた。
こちらは、以前の仕事場にも近かったこともあり、じつは知っていたビルだったが、このリノベーションに、こういったファンドのメカニズムが働いていたことを今となっては理解できるのが有り難い。

・都内Class A超高層オフィス
こちらは某デベロッパーによる有名なビルでリーマンショック前後の取引により、様々なファンドの手に渡った。こちらのエントランス部を大々的にリノベーションし、さらに飲食店を誘致しやすいように動線なども変更。
最終的には非常にいいPerfromanceのディールだったとのこと。

・都内繁華街に位置する小規模商業ビル
こちらも外観内装ともにかなりのリノベーションを行っており、実際に新築のような様相まで呈している。テナントの総入れ替えを行いながら目標賃料まで持っていったとのこと。

・建築的Add Value
また、現在検討中との再開発用地について、総合設計によるValue Upが見込めるかどうかの検討を担当させていただいた。こちらは実際に再開発となると出口がデベロッパー等になることから、このPerspectiveがAcqisition段階で見通すことができれば、相当のアップサイドシナリオとなることになる。ここはゼネコン設計部出身者としての腕の見せどころである。

最終的にはどちらの組織も、チームのほぼ全員と実際のディール、ランチやディナーを通じてじっくりとお話させていただい、それぞれのカルチャーやディール・オフィサーのあり方についての違いなども理解でき、これ以上にない有意義なインターンとなった。

インターン前にRickやApeseche、そしてHBSのNoriのクラスを取っていて本当によかった。そこで習得した技術や考え方が、インターンの入り口からビシバシと役立っていた。これら不動産デザイン学科での学びと、現実世界のディールの一端を担えたことで、見えるものがよりクリアになった。
この機会を与えてくれた各社のMDは僕にとってはもはやMentorであり、今後も大切にしたい繋がりである。心から感謝を申し上げる。






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