2017年1月30日月曜日

1st semesterの振り返り

怒涛の1st semesterが終わり、その後家族のケアや自身の東京でのプロジェクト、アジアトレックの関係で投稿が遅くなってしまったが、あらためて整理のために振り返りを行っておきたい。

以下、1st semester全4つの授業についてそれぞれの成果と達成できたこと、2nd semesterも継続目標のこと、気付き等々を記しておきたい。また、公開可能な範囲で最終成果物もアップロードしておくので、どうぞご自由にご覧ください。また、使用希望の場合はメッセージかメールにてご連絡をいただいた場合は許可をします。著作権は筆者に属しますので無断転用、使用はお控えください。




1) Real Estate Finance and Development by Richard Peiser
この授業の集大成は、不動産開発とファイナンスの基礎理論を組み合わせて、不動産開発プロジェクトのピッチを一からつくりあげ、投資家向けのプロジェクトレポートにまとめるというもの。

敷地の選定からプロダクト・タイプ(不動産用途)、ファイナンス・ストラクチャーや投資出口を含め、すべて各自で設定し、オリジナルのプロジェクトをつくりあげる。僕の場合は自身のTokyoでのMicro Mixed Useプロジェクトを取り上げた。

現実に進行するプロジェクトであることで内容が具体的になることと、国際基準での投資レポートをつくってみたいという想いから選定。Peiser教授からもクラスメイトにとっても学びの多いプロジェクトとなるため、是非進めるようにとの後押しもいただいた。

Final Submissionはこちら 

結果的にはフルスコアをいただけた。今回のプロジェクトピッチの作成は米系コンテクストの中で客観的に自身のプロジェクトを分析し観察することができたため、非常に有用な成果物となった。
2016 fall semester中、最もハードなクラスだったが得られるものも当然大きかった。
はっきりいって、この手の授業が日本の建築学科、都市計画学科にあるべきと思うし、総合大学に設置されている建築系大学院には是非ともMBAとのコラボ含め、クラスの設置をお願いしたい。


成果としては下記:

・英語環境での不動産ファイナンス、開発の基礎づくりを行うことができた。
・ハーバードの特徴であるケース・メソッドに慣れることができ、また得られるものも大きかった。
・Peiser教授からULI書籍の翻訳について、進めてみてはどうかという許可を得られた。実際に翻訳を行うには日本の出版社からの許可も必要であるため、営業活動に移りたい。


継続課題としては下記:
・引き続き、ケース・メソッドでの議論により積極的に関わるための英語スキル磨き
・不動産ファイナンスの実務に向けた知識の精査
・小技ではあるが、エクセルのモデリング時の使いこなし法の取得

以上。





2)Form + Finance by Bing Wang & David Gamble
Real Estate and the Built Environmentの学科長であるBing Wang教授の目玉授業である。最終成果物として建築のデザイン(Form)と不動産ファイナンス(Finance)の両側面から考案したプロジェクトを3人一組のチームで創り上げ、発表する。
クリティークはBing Wang教授をはじめ、David Gamble先生、HBSからはWilliam Poorvuが参加し、実業界からも3名が参加するという錚々たる顔ぶれ。

僕等のチームは、MITに隣接した敷地を選定。
現在、NovartisやファイザーといったBio techがMITやハーバードとのコラボ目的で広大なコーポレートキャンパスを築いている環境に隣接する。現在は使われていない工業用倉庫を活かして、コミュニティホテル、SOHO、トラディショナルオフィス、Co working スペース、そしてレジデンスへとコンバージョンするプロジェクトだ。
チームメンバーのバックグラウンドも非常に面白い。

一人は中国大連出身のコーネル大学のホテル学専攻でJLL東京オフィスのインターン経験者
もう一人はレバノン出身のエンジニアで実家がホテルを経営、ドバイでも働いていた

この顔ぶれから、建築系バックグラウンドは僕のみで、あとは基本は企画やファイナンスのバックグラウンド。それぞれメンバーが忌憚のない現実的なアイデア発信や議論が行えるため、現実味のある充実したプロジェクトとなった。

Final Presentationはこちら

クリティークからのフィードバックも非常に熱い議論となった。特にミクスト・ユース用途については、この近辺のホテルニーズやポテンシャルを考えて、あえて用途をホテルに絞るのがよいのではないかという議論も出た。確かにプログラムや投資判断もシンプルになる。しかし、あえてミクストユースへのコンバージョンに挑戦したことで、知見も深まったし、これから都市部での有休不動産の活用ではミクスト・ユースという観点が欠かせないと考えている。

他のチームの発表もどれもよく練られており、非常に刺激になった。面白いのは、大半のチームがCo Workingをコンポーネントに取り入れていることだった。やはり、時代のニーズを反映しているものと思われる。

こちらも日本のデザイン系大学院には是非取り入れてほしい授業の1つだ。この視点があればこそ、不動産業界に入る学生にクリエイティブな視点を与えることができるし、設計業界に入る学生にとってはデベロッパーや投資家の判断基準がわかるため、効果的な提案が可能となるだろう。




成果としては下記:

・フォームや用途がどのように不動産に付加価値を与えるかを習得できた。
・不動産投資プレイのさわりを理解できた。Core, Core+, Added Value, Opportunistic


継続課題としては下記:
・William Poorvu氏の主宰するコンペへの提出が冬休み期間のAsia Trekと重なりできなかったため、来年は挑戦したい。

以上。





3)Real Estate and City Making in China by Bing Wang

このクラスは個人的には自分の研究テーマを定め、そして深めてゆくうえでも最も役立った授業だ。学科長Bing Wang教授の指導が非常に明快なことと、アジアと米国のコンテクストに熟知している彼女だからこその視点がありがたい。
僕のテーマは
「Challenges in International Real Estate Investment in China」

いわゆる成熟マーケットで地位を築いてきたデベがなぜ新興都市に進出するか、そしてそこで遭遇したチャレンジと乗り越えた方法を明らかにする。
ケースとしては、森ビルの国内六本木ヒルズ、そして上海のShanghai World Financial Centerとの比較、また鹿島による虎ノ門タワーズと瀋陽春河地区開発の比較、またShui on LandによるHong Kongの開発と上海新天地プロジェクトの比較。

最終論文はこちら

このファイナルペーパーは結果的に、教授からもHigh Passをいただき、今後さらに研究を継続することを強く薦められ、僕としてもCross Boarder Investmentを将来的には行うことを見越しているため、目下継続中である。このペーパーを通じて、森ビルやアジアの投資ファンドとの繋がりもでき、ある意味では道を開いてくれた頼もしい成果物となった。

成果としては下記:

・国際投資、とくに新興市場におけるリスクとリターン、判断に関わる知識の習得
・中国において政府と民間、海外勢がどのようにinteractionしてきたかを理解
・自身の今後の研究の骨子が見えてきた
・デベや投資ファンドと対話するための基本知識が得られた


継続課題としては下記:
・25ページのペーパーだったが、Literature Reviewについてはさらに広く文献をあたり、レビューをしっかりと行いたい。
・ペーパーを執筆する上での英語のライティングスキルの向上を目指したい。

以上。





4)Cities by Design by Peter Rowe and Alex Krieger
名物教授二人による授業であり、毎度語られる都市デザイン講義は聞いていて、とてもワクワクするものだった。
また、各都市のセッション後にはチームプレゼンがあり、学生が都市デザインの歴史やプラン、実現された都市空間についての調査報告を行う。

僕は上海チームだったが、都市デザイン学科の学生や他のMdesの学生とも共同作業ができ、ディスカッションも盛り上がったため、非常に楽しめた。
テーマは上海のSuper Tall Buildingが集結するPudong, Lujiazui地区の近代の変遷と現在の都市空間の成功と影。

プレゼン中、上海と東京の都市空間の比較や問題点指摘をしてみたものの、東京はアメリカ人にとっては混沌とした状態や雑踏に凄みを感じるらしく、東京の問題点である職住分離による多様性の欠如などは認識していない様子だった。

最終プレゼン、自身のパートはこちら



成果としては下記:

・都市デザインにおける基本知識を米系文脈の中で理解できた
・都市環境の事例と成り立ちを知ることで、今後どのような観察眼を持つべきかを理解


継続課題としては下記:
・都市デザイン領域は定性的な判断や成果が多いため、切り取る側の視点やスタンスにどうしても引き寄せられてしまう。定性的な観察と定量的な観察をどう組み合わせてゆくかを探求する必要がある。

以上。



写真は学期の無事の終了を祝してのアフタヌーンティ@ボストン公共図書館。教授と学生を囲んでの和やかな一時であり、お互いの健闘を称え合った。