2017年4月22日土曜日

2017 Spring, 2nd semester 授業紹介

1月の怒涛のアジアトレック、夏期インターンへの応募やインタビューなどに忙殺されているうちに、すっかりケンブリッジにも春が訪れてしまった。

若干振り返りながらの投稿となるが、2017, Spring Semester(2nd Semester)で僕が取っている授業を紹介しておきたい。
今学期はデザインスクール(GSD)の雰囲気や授業方式、基準にも慣れてきたこともあり、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の授業やケネディ政策大学院(HKS)との合同授業も取っている。


1) Advanced Real Estate Finance + Building and Leading Real Estate Enterprises and Entrepreneurship by Frank Apeseche

前学期のRick Peiserによる不動産ファイナンスと開発の基礎を一通りマスターした学生に提供されるアドバンストなクラスと、不動産やReal Estate Private Equity Groupを起業するための指南を行うクラス。

不動産デザイン学科のCo DirectorであるFrank Apesecheによる授業であり、Frankの実績ははっきりって目もくらむほど。バークシャーグループ(Private Equity)のCEOや不動産系ベンチャーのChairmanを歴任し、またREITの売却も行い、BlacksoneやGoldman Sachsとのパートナー事業も手がけている。

それだけに授業では、業界図を解りやすく、実話を交えて伝えてくれ、また実務での意思決定思考やリスク分析を披露してくれる。もちろんケーススタディも豊富で、ゲストスピーカーに至っては自身の事業パートナーを紹介してくれることから、生々しい話も伺える。

授業というよりは起業家育成塾のような雰囲気で、学生のコミットメント度合いも非常に高い。もちろん不動産事業計画(Pro Forma)が素早く作成できることが前提のうえで、投資判断を仰ぐAssignmentが多く出題される。

最終的には、Real Estate Enterpriseをつくるためのビジネスプランを策定するか、不動産ビジネスについてのリサーチペーパーを書くというFinal Projectを各人がつくることとなる。

僕自身、かねてよりスタートしていた自身の不動産ビジネスをどうスケールさせるかを明らかにしたかったこともあり、Office Hoursも含めてFrankからは徹底的に知識を吸収している。それでも溢れる溢れる。笑

それほど濃密な内容なのだ。実際、来期も聴講のみ行いながら、知識の総ざらいをしたいと思えるほどだ。

・AcquisitionとDisposition
・Cycle Cycle Cycle!
・Waterfallとよばれる、不動産投資体には欠かせない利益分配の仕組みづくり
・REITやInstitutional Investor
・Berkshire Methodと彼が名付ける投資判断のためのショートカット
・Private Equity 概略
・実際のディールでのIRRやMultiple
・企業の成長とOrganization

などなど、デザインサイド出身者からは、不動産の世界を支配している仕組みにどっぷりと浸かることができる。

自身の到達目標は、やはりスタートアップから事業がスケールする流れを習得し、業界の相関図やプレイヤーを把握することにある。
当然、Final ProjectもHow to Scale My Businessとしたい。

自身のディールについて惜しげもなく語るFrank Apeseche教授






















2) Public and Private Development by Jerold Kayden

こちら官民両方の観点から都市開発を紐解くHKSと共同で開催されるロングラン授業。すでに30年近く教鞭をとる人気教授のJerold Kaydenによる安定感のあるクラス。
彼はもともとは法律家出身で、官民両方の開発や都市政策に様々な形で関わっている。学生を巻き込むことと、冗談を飛ばすのが生きがいである。

この授業はGSDの不動産デザイン学科と都市計画学科(Master of Urban Planning)の学生の大半が取る授業であり、かつ都市政策や公共公益という趣旨からケネディ政策大学院の学生も取っている。

不動産開発に必要な不動産ファイナンスの基礎、つまりBack of Envelope計算から入り、都市開発やAffordable Housingの普及にインセンティブを与える都市政策を外観する。我々不動産デザイン学科の学生にとってはファイナンス・パートは安心して聞いていられる。これも前学期のRickのおかげである。
助手のKristenも素晴らしいフォローをしながら、学生全員がしっかりとついてこられるようにとても解りやすいReview Sessionを提供してくれる。

授業は座学、ディスカッション、ゲストレクチャー、共同プロジェクトが実にいい割合で組み合わされている。

ゲストスピーカーには、PublicサイドからはNew York City Planning Officeの実務家やChair、Torontoのウォーターフロント開発の責任者など錚々たる顔ぶれが揃う。Private側からはAffordable Housingにフォーカスしたユニークなデベロッパーや、PPPを行うデベロッパーなど社会に不動産開発を通じてどう貢献するかを実践している方々。

そして、このクラスのハイライトは何と言っても共同プロジェクトの「Land Disposition」だ。
Boston市が所有するFinancial Districtの実際の土地を払い下げるに際して、入札と評価のロールプレイを行う共同プロジェクトだ。

クラスをPublicチームとPrivateチームに分けて、Privateチーム(入札デベ)がプラン、事業計画、入札金額を盛り込んだプロポーザルをPublicチーム(評価側)に提出し、最終的にどのチームを落札者として選ぶかをロールプレイする。
チームはもちろん、学生のバックグラウンドを考慮してバランスよく組まれる。ファイナンス、都市デザイン、都市計画、公共政策というタレントからなるチーム


自身の目標としては、官民での都市開発のベストプラクティスについての理解を深めておきたい。またPublic Benefitを提供できる不動産開発とな何なのかについての視点を、官民両側の視点から考察しておきたい。
ネットワーク面でも都市計画やHKSの学生達との交流が楽しみである。

ゲストスピーカーとKayden教授






















3) Real Estate Private Equity by Nori Gerardo Lietz

僕としてははじめてとなるハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の授業。
実はPrivate Equityの世界では泣く子も黙る名物教授であり、パワフルウーマンであるNori教授の超人気授業。

それだけに、HBS生以外のいわゆるクロス・レジスター(領域横断)を希望して授業を受ける学生はくじ引きによって授業を取れるかどうかが決定される。後で知ることになるのだけど、実はくじ引き以外にもレジュメを教授に前もって提出することになっているため、レジュメとともにクラスの多様性やバランス、バックグランドを考慮して学生が選ばれているようだ。
ありがたいことに、結構な倍率を勝ち抜いて、晴れて受講生となることができた。

HBSの授業はほぼ全てがケース・スタディ・メソッドに沿っており、HBS生のブログにも詳しいが、毎授業で実際のケースを読み込んだうえでのディスカッションが中心となる。さらに、不動産に関連したプライベート・エクイティの領域を扱うことから、不動産ファイナンス、Proformaと呼ばれる事業計画とリターン分析のモデルを検討したうえで、投資判断を話し合うことになることから、授業に挑むための準備にはかなりの時間と学習が必要だ。

そしてNoriの名物であるCold Call、いわゆる抜き打ち指名で発言を求められることが多々ある。例えば、日本の不良債権が話題になるケースであればもちろん日本人が当てられるし、Blackstoneなど実際の企業出身者がクラスにいる場合はその学生達からの意見をクラスに取り入れる意味でもCold Callされる。
これを切り抜けなければ減点されてしまうというルールもあるが、実際は教育としてもいい緊張感があり、非常に効果的だ。
そして、彼女の愛情のある導入のお陰で、笑いと痛快さがクラスを包む。

Nori教授は自身もプライベート・エクイティ投資会社を持っており、不動産投資アドバイザーとしても知らない人は業界にはいないくらいの有名人であるため、ゲストスピーカーの豪華なこと。そして、裏話も歯に衣着せぬものいいで伝えてくれる。

前学期はデベロッパーとして自分のビジネスをスケールすることくらいしかアイデアがなかったが、アジア・トレックで様々なプレイヤーに触れ、またNoriの授業を取ることができ、プライベート・エクイティを使った不動産開発を活用することも見えてきた。それだけ自分にとっては背伸びをしなくてはいけない環境であり、濃密でタフな授業であるが、開眼させてくれた授業でもある。

評価は授業へのコミットメント(参加)が50%であとはAssignmentとFinal Projectで50%の配分が基本。
Final Projectはずばり、Start Your Own Private Equityだ。二人組で投資家へのピッチブックを作り込み、最終的にプレゼンをするという実践的なFinal Projectだ。

この授業をSurviveすることができれば、大きな自信となるとともに、自分のネットワークも広がるだろうことを実感する日々。


目標としては、HBSのケース・メソッドに慣れたうえで、投資判断をできるようになること。そしてピッチブックを英語で作成できるようになること。また、PEの世界のプレイヤーや戦略について少しでも見識を身につけること。



有名な闘技場型のHBS教室 真新しいネームタグ。Nori教授は一人ひとりの顔とバックグランドを覚えている




















4) Market Analysis and Urban Economics by Raymond Torto

不動産のマクロとミクロのマーケット分析と経済を基礎から学ぶ授業。不動産デザイン学科長年の名物教授であり、CBREの元、伝説的リサーチャーであるRay Torto教授による授業。
もう御年75歳とのことと、大病を患われたこと、また独特のボストン訛りの英語から、少々聞き取りづらいのが難点だが、不動産マーケットを知り尽くしたRayの教えは示唆に富む。そして普遍的な法則について核心をつく授業が展開される。

授業では、実際にCBRE EAやRCA等のデータ分析ソースを使用しながら、自分でマーケットを分析する。

ボストンやニューヨーク、サンフランシスコは昨今不動産が高値を更新して活況を呈しているマーケットだが、今後の予測はそう明るいものでもなさそうだ。かと言って毎年家賃や学費が値上げされる米国のファンダメンタルズの強さからすると、まだまだ海外からの資本が投入されている。

今後、不動産マーケットはどうなってゆくのか、人は何処に住まうのか。Live-Work-Playが実現できる場所や雇用が創出されつづける場所はどこなのか。様々な視点がリサーチャーの揺るぎない理論のもとに展開される。

はっきりいって、この理論を学ばずして、いままで不動産投資をしてきたことにちょっとゾッとする瞬間もあった。このマーケット分析手法の基礎を体得すれば、今後も一生つかえる知恵だと思う。

到達目標としては、マーケット分析をフェアな目で行える技量を身につけること。世界の不動産業界の趨勢であるCBREを始めとするソースの活用に慣れること。


コメンテーターとしても活躍したRay Torto教授

家賃相場と空室率をあらわすサイクル








































以上が今期の授業紹介。非常に濃い内容と新しいチャレンジを含むため、やりがいを感じながらもついてゆけるのだろうかと不安にもなる。が、領域横断的で実践的な体験こそ、ハーバードの得意とするところなので、楽しみながら挑んでゆきたい。