2016年11月8日火曜日

Mid-term 終了!

先々週にFirst Semesterの山場だったMid-term期間(テストや課題中間提出)が終了した。
米国スタイルの授業やAssignment(課題または宿題)について行くので精一杯だった今学期の前半が無事に終わった。

我が不動産デザイン学科はポストプロフェッショナルということもあり、ネットワーキングを行うイベントが、毎週のように開催されていて、学生は皆、学業に励む傍らで精力的にネットワーキングに出かける。
不動産は「ロケーション、ロケーション、ロケーション」と言われるが、同時に、「ネットワーキング、ネットワーキング、ネットワーキング!」なのである。皆社会人経験があるので社交に長けた同級生が多く、本当に刺激になるし、お互いに誘い合うので自然と実業界、アカデミア問わずにネットワークが広がることが嬉しい。

各授業とも濃密かつ集中力が必要なので疲れ果てるが、その後にはネットワーキングに出かけ、一杯飲んでリフレッシュ、また図書館に戻りAssignmentをこなし、リーディングを行い、場合によってはグループワークを深夜まで続ける日々が続いた。

慣れない環境の中で最初の山場となるMid-term期間を勉強仲間とともに乗り切れたことに今は何より、安堵している。Semesterの折り返し地点を無事に通過といったことろか。

僕のMid-term戦歴と学びを備忘録として記したい。


1)Real Estate Finance & Development
Mid-termは2つ。ファイナンスモーゲージテストと不動産鑑定評価課題(Appraisal Project)

まずは我らが不動産デザイン学科の必須授業であり根幹の1つであるクラスのファイナンスモーゲージテスト。つまりは不動産デベが資金調達する際に銀行からいくらを、どれくらいの金利で、どのくらいの期間借りれば、プロジェクトが成り立つかを計算するテスト。またDCF法や投資評価指標の基本も抑えるテスト。

日本での不動産投資では見てこなかった指標や手法も身につけることができ、不動産ファイナンスのメカニズムの基礎を理解する上では非常に役立ったテスト。
ただし、相当にハードなテストであることは間違いない。満点を取れる学生は毎年2人程度とのことで、今年も例年どおりとのこと。自身の感触は80%あたり。


次に不動産鑑定評価(Appraisal Project)。これはグループで行うプロジェクトで、ボストンの特定のエリアと不動産を選択して、その不動産評価を行うもの。
このプロジェクトに上記のファイナンスの基礎知識を応用しつつ、最終的な不動産評価レポートを作成することが目的である。実際の街が対象なので、色々な意味で盛り上がる。
自分が投資家なら、レジ系にするかリテール系、はたまたAクラスオフィスを投資対象とし選ぶか。。

我々はチーム自体が多国籍ということもあり、各国に帰ってもマーケットや扱い方に共通点があるレジデンス系を選択。下記に最終レポートの一部を公開する。

マクロ、ミクロレベルでのマーケット・トレンドの調査から始まり、実際の物件訪問、比較対象物件の調査を経て、最終的にスプレッドシートを作成。DCF分析まで至る。
DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)で明らかになるのは、その物件が自分たちの期待する投資を満足するためには、一体いくらで購入する必要があるか?というもの。
物件取得後から物件売却までの収益を、期待する利回りで現在価値まで割り引くのだ。

チームワークにも恵まれ、学びの多いプロジェクトとなったし、この指標如何によって不動産のデザイン余地などにももちろん影響するわけなので新たな武器を手に入れた感じだ。
こちらは結果が出揃い、我々のチームはほぼフルスコアを獲得することができた。

ボストン、ノースエンド地区をプロジェクトに選んだ

マクロ、ミクロレベルでのマーケット分析

対象物件の調査

Comparable(比較物件)の調査と比較

DCF法による分析


2)Real Estate and City Making in China
一般的にリサーチ・セミナー形式と言われるこの授業は少数精鋭で中国新興都市におけるリサーチを各学生が行い、Mid-termにその成果を授業で発表する。
Bing Wang教授と二人三脚でリサーチを行い、約1時間の持ち時間の中でクラスに対してリサーチを共有することから、さながら学生個人が授業の一部を行っているようなものだ。

僕にとってもほぼはじめての英語での長時間プレゼンだったし、リサーチもボリュームが多かったことから、Mid-termの山場の1つであった。

僕のリサーチテーマは「Challenges in International Real Estate Investment in China」だ。
以前から興味のあった分野で、新興都市で如何に我々日本企業が不動産開発や投資を軸としながらも都市生活の創造に貢献できるかを探るものだ。
「Why do we invest in China?」というシンプルな問いかけを軸に、中国に投資してきた森ビルや鹿島のケーススタディをもとに、そのチャレンジと成功、そして困難をどう乗り越えたかをあぶり出す。


森ビルの例では上海ワールドファイナンシャルセンターと六本木ヒルズのオフィス棟を比較しつつ、簡易な投資対効果等を比較した。

鹿島の例は担当だったこともあり、瀋陽でのマスタープラン策定から端を発した、VankeグループとのJVによる分譲マンション事業の採算と、虎ノ門タワーズレジデンスの採算を簡易試算をもとに行った。

結果は統計や実経験に基づいたケーススタディが好評で、クラスのメンバー、そして教授からもポジティブなフィードバックがいただけた。英語でのプレゼンではあったものの、プレゼン英語を極力シンプルで伝わりやすいもので一旦組んだうえで、当日はテキストを読まずに、自分の言葉で話せたこと。そもそも統計やケーススタディの組み立てを明快に出来たことで研究内容がストレートに伝わったようだ。

今後の研究についても、このテーマを深掘りしてよいとの快諾を得られ、はじめての充実感を味わった。

以上が山場となったMid-termと振り返り。


2016年11月1日火曜日

伝説の授業 Lecture with the Legend

ハーバードビジネス・スクール(HBS)の不動産系授業で30年以上に渡って教鞭をとってきた伝説の教授をご存知だろうか。もちろん、実業家としても数々の成功を収めてきた人気教授。

William Poorvu氏だ。

我がデザインスクールの不動産学科でも領域とカレッジを超えた数々の授業が提供されるが、この日は僕にとって特別な日だった。

Poorvu教授が我が不動産デザイン学科で、彼得意のケーススタディをもとに教鞭を取る日だ。
実はPoorvu教授がHBSで教鞭をとっていた人気授業が書籍となって約9年前に日本でも翻訳本が出版されていた。


この翻訳本は、不動産の実在プレイヤーがどのようにゲームを組み立て、創造性をもってコマを進めていったか、あるいは脱落していったかが活き活きと表現されている。
僕がちょうど大学院を出たころに手にした本で、不動産から建築デザイン、都市デザインをリードしてゆくという活動のきっかけを与えてくれた非常に重要な本の1つだ。そしてあっという間に9年の月日が流れていたことに今更ながらに気づき、驚いた。

授業は、事前に与えられたNew York CityのBattery Park CityについてのケースとBoston Fan Pierについてのケースを読み込んだ上で、自分なりの比較を行い、検討し、判断を下すものである。

poorve教授を囲む生徒。もちろん各学科の先生方も我先にと参加する。


実際にそれぞれのプロジェクトは不動産事業として、段階的な紆余曲折を20年間におよび、経ながら、光と影の部分を包含し、今の姿へと至っている。
その中で、各段階で関わったプレイヤー(デベロッパー、金融、行政、パートナー企業、テナント、地元)がどのように行動し、その結果どういう事態が引き起こされたかを描いていて、ケースを読んでいるだけでもドラマのようである。

クラス内ではPoorvu教授が、あるき回りながら、次々に生徒を指してゆき、プレイヤーとしての判断を求めてゆく。そしてさらにWhy? and Why?と答えを追求してゆき、プレイヤーの心理や感心=Appetiteをあぶり出す。
そして、実際に各プレイヤーが取った判断や行動を最後に紹介する。

印象深かったのは、不動産の大きな潮流を考えるうえで、教授の示すタイムフレームである。

「10年のマーケットサイクルと5年の人間の記憶のサイクルで不動産は動いている。」

という金言だ。

確かにここ20年の不動産のサイクルを見ても、また長期的な不動産開発プロジェクトにおいてもこのサイクルが当てはまるし、不動産自体が人間の生活や成長の受け皿である限り、このサイクルから逃れることは難しいだろう。

次のサイクルは2018年あたりなので、それまでに諸々準備をしておきたい限りである。

熱狂覚めやらぬ中で、時間切れとなり授業自体はあっという間に終わってしまったが、授業後に早速、Poorvu教授に9年前に購入した訳本を握りしめ駆け寄った。
そして、自身が不動産の魅力に気づくきっかけを与えてくれたことへの御礼を述べ、固く握手を交わした。

教授も日本語版を出したときのことを思い出して喜んでくれたことはよかった。
もちろん、サインをいただき記念撮影。
感無量である。

不動産開発に対する、深いが直球でシンプルな洞察や「Why?」を問い続ける姿勢、そして実業家としても数々の成功を収めてきた師から学んだことを、これからの活動に是非活かしたい。

Poorvu教授とともに。快く訳本のサインに応じてくれた。