2018年5月19日土曜日

2017 Fall Semester, 3rd Semester 授業紹介

そろそろ留学生活も大詰めを迎えているので、振り返りながら、学びや気付きをまとめておきたい。

まずは2017, Fall Semester(3nd Semester)で僕が取っていた授業を紹介しつつ、そのフィードバック等をまとめておく。

3rd Semesterは最終論文でもありプロジェクトでもあるOpen Projectが始まる時期なので、GSD,HBS,HKSでの今までの学びやサマーインターンでのスキル習得を活かして、Open Projectの構想を練り上げることを行いつつ、Field Studyを中心とした。シアトル、ボストンでのFirst Handな経験をもとに米国基準での都市計画、不動産開発、設計、施行についても具体的に知見を広げた。


具体的に取った授業は下記。


1) Field Studies in Real Estate, Urban Planning, and Urban Design, case in Seattle by Richard Peiser 

一学期の不動産ファイナンスに続き、名物教授であるRick Peiserが主導するField Study型の授業。この授業は不動産デザイン学科の中でものめり込める非常にお気に入りの授業のひとつ。

毎年、Rickのパワフルな人脈により、様々な都市をフィールド・スタディの場所として選定し、その都市の都市計画局や地元デベロッパー、建築家、不動産アナリストそして市民団体をアドバイザーに迎えて、最終的に選定都市への開発提案を行う。

Field Studyクラスの学生構成はコンパクトかつ精鋭を揃えてのクラス構成となる。

不動産デザイン学科の学生はもちろん、Urban Planning学科、Urban Design学科、そしてMark、つまり建築学科からの学生からの混成チームが結成される。

各回に、開発計画を提案するにあたり、不動産ファイナンス側だったり都市計画論側からの短い課題が出される。

そして、学期中期に目玉である選定都市訪問、そしてField Studyと地元ステークホルダーとの対話が行われる。もちろん学期末には提案書を練り上げ、最終プレゼンを地元ステークホルダーと教授陣を前に行う。

昨年のField Study地はマイアミだったため、応募者殺到のうえ、くじ引きによる抽選となったが、今年もAmazon本社やFacebook、Google、ボーイングが本社を構えてテック系雇用の震源地となりつつあるシアトル。
なんとか抽選に繰り上がり合格し、実地調査ができることになった。


シアトル市街地をGas Works Parkから望む。以前はガス生成所があった場所を都市公園へと再生




最終プレゼンを行った、我らがTeam Gooseの案(都市計画系と不動産系の学生5人の米国、インド、モナコ、日本からなる混成チーム)

操車場とアーミー用地が残るInterbayというシアトル市街北部のエリアにPromenadeを軸とした様々な活動がCrossする「場」を提案。
クラス内とシアトル側の審査委員から見事一位に選ばれた。





シアトルは現在、Amazon社が本社を構えて、その規模をさまざまな企業買収とともに急拡大している。現在シアトルでの社員はなんと4万人!

まさにAmazon Villageが出来上がっており、地元にとってもAmazonの雇用がもつインパクトが凄まじい。

画面の黄色いハイライトがAmazonによる開発。

ほぼ市街地の大規模開発の70%はアマゾンによるものだ。

また、その他にも青ハイライトはFacebook、赤ハイライトはGoogleの施設群をしめす。

また、InterbayエリアにはExpedia本社も新設予定。








このField StudyではAmazon本社の開発、設計を手掛けたNBBJの設計部長から直々に案内を承けた。また、実際にはAmazon自体も不動産開発を行っているため、GSD出身者を多数採用している。



また、現地シアトルのワシントン・ユニバーシティでも教鞭をとりULIのコアメンバーであり都市計画家のPike氏を始めとして、不動産アナリスト、市民団体、アーキテクトデベロッパーの方々が勢揃いしてのシアトルの都市計画と市況についての濃密なレクチャーシリーズとディスカッションが行われる。













もちろん濃密なField Tourの合間にも、シアトルの建築群を巡る。
特にOMAによるSeattle Public Libraryは必見。多様につながる空間と、独特の外皮により居場所がいくらでも選べる。少し小高い丘の高層ビル群の切れ目に位置するのだが、視認性が高いわりに都市に公共空間を内外に与えている。

また、スターバックスの創業者ハワード・シュルツがレイ・オールデンバーグからヒントを得て作ったとされるサードプレイスの発祥地、つまりスタバ一号店は是非とも訪れてみたい場所だったので、念願が叶った。













Field Studyの中ではSeattleの市街地の他に、Bellevueも廻った。シアトル市街地からおよそ車で20分程度の対岸に位置するこの街、なんとほぼ街区すべてがKemperというデベロッパーによって40年にわたって開発されて来ており、今はハイエンドな商業とオフィス、高層住宅からなる地域となっている。

下記は実際に40年間のBellevueの発展を手がけてきたKemper会長その人。自ら模型を示しながら、そして施設を歩き回りながら発せられる言葉には熱が入っていた。日本でいう森稔さんのような方だ。
印象的だったのは、昨今にAmazonなどのE commerce台頭により商業施設の必要性を危ぶむ声がある中で、それでもやはり商業がカタリストとして街には必要だという信念。彼の開発の中心には常によく考案された駐車場つきの大規模商業がある。

また、テナントやワーカーともコーヒー片手に気さくに話しかけて、足で稼ぐ姿は大いに見習うものがある。















ますますテック系人材が流入し、そして自然にも恵まれたシアトル・メトロエリアは今後も発展する見込みが高く、オフィス系不動産開発が今後も期待される。同時に交通やアメニティなどのインフラがまだまだ未整備でもあるため、様々なプロジェクトが目白押しだ。

これらのField Studyを経て、米国の各都市における固有性や開発機会の底力を感じた。では日本では西と東、あるいは北と南ではこのように力強く、個性を保ちながら発展を遂げている都市があるだろうか?住み分けとも取れるこのような米国各都市の傾向からヒントを得た。

このField Trip後に約3週間をかけて、各学科からの学生の持ち味を活かしつつ、シアトル市インターベイエリアを統括する市政府局へのレポートとプレゼンを練り上げる。

Field Tripを終えたチームは一丸となって、各々の専門性を活かしつつ、いい案を練り上げた。我々のチームは操車場を撤去し、プロムナードを導入しつつ、ウォーターフロントと内陸地を分断するマグノリアブリッジを付け替えるという案を示した。
もちろん、Land Developer / Building Developerとしての事業性も担保しつつだ。

日本では大阪や、中国地方各都市(岡山、広島)、福岡といった西側の地域に非常に有効な開発と成りうるだろう。

レポートには他のチームからの素晴らしい提案も含まれているため、時期をみて、また公開したい。






Field Tripも含まれたいわゆるGSD名物のスタジオスタイルに近い授業であったため、非常に長くなってしまったが、求められる貢献度とプロダクションの物量が多いため、覚悟を持って望む必要がある。だが、もちろん得られるFirst Hand ExperienceとNetwork、Knowledge、として戦友との絆は計り知れない。

気づきとしては下記
・米国の各都市はそれぞれ、不動産開発の求心力が異な、独自の発展を遂げている
・企業誘致の重要性と相乗効果のあるアトラクション
・美味いもの、うまいクラフトビールがある都市には人が集まる
・ワシントンUとの連携によりテック系の優秀な人材と企業誘致のマッチング
・都市計画系の人材との連携は視点を増やせる。特に米国ベースの学生
・Rickとは僕の東京、スリランカでの仕事の話も通じて、生涯の関係が構築できた

以上


2) Global Leadership in Real Estate and Design by Eugene Kohn and Bing Wang

こちらもField Studyにつづき、スタジオスタイルに近いプロジェクトベースの人気授業。泣く子も黙るKPFの創業者の一人でもあり、現役のEugene Kohn氏に直接師事する機会を得られる貴重な授業。
Bing Wang教授は不動産ファイナンスの側面から学生を促してゆき、もちろんGeneは得意の複合開発から実績をもとに示唆を与えてゆく。

レクチャー形式は一学期のForm and Financeに似てはいるものの、クラスは実際のトリップと敷地調査を得て、実際にデベロッパーがKPFと開発する敷地に他の解を出すというもの。
2つの対象敷地があり、1つはバルセロナでBingによる指導、そしてもう一つはボストン・シーポートエリアでのKPFデザインによる開発地区であり、もちろんGeneとKPFのチーフアーキテクトによる指導。

Shanghai World Financial Centerや六本木ヒルズ、NYハドソンヤードプロジェクトでの具体的なエピソードやでデベロッパーとのやり取りなど、興味が尽きないが、彼の直截でありながらユーモアたっぷりな話っぷりにどんどん引き込まれてゆく。

そしてKPF創業期の話を語ってくれた。Gene自体はデベロッパーとの協働や組織のリードが非常に上手い人物であり、デザインでは圧倒的にPedersonが上手いと自身も認めているようだ。

面白いのが、六本木ヒルズの最上階に美術館を置くアイデアに当初は反対していたという事実。結果は明らかだ


この距離で自身のスケッチをもとに、的確なアドバイスをくれる。
最高の時間だ。

Gene、KPFからのフィードバックは下記。

・スタートは出来るかぎりシンプルに考える。とくに複合開発を考える上では用途を交錯する導線に注意
・アメニティと公共空間は重要、ただし事業性を阻害しない範囲で
・六本木ヒルズの自身の体験をプレゼンしたが、好評をいただいた。





もちろん不動産事業性を担保するためのProformaを同時に検証しつつ、ミクストユースを計画してゆくのだが、変数が多いために、最終的な案にたどり着くためには、チーム内のかなりの議論と迷わないVisionを必要とする。
今回のチームは不動産デザイン学科の一年生と二年生、そしてランドスケープ学科の学生による。


現地をKPFのチーフアーキテクトと施工会社が案内してくれる。ゼネコン出身者としては血が騒ぐ笑












下記は成果物の一部。

















最終プレゼンでは各チームからのデザイン的質の高い成果物が相次ぐ。これぞGSDだろう。このクラスは数年に一度のペースでBing Wang教授が書籍として取りまとめて出版もしている。今回は書籍には含まれないかもしれないが、様々な気づきがあった。

・複合開発という変数やステークホルダーが多い開発形式ではVISIONに常に立ち返ること
・多様なパブリックスペースの創出
・Value Mappingというテナント、コンド価格の尺度づけ手法
・数字はあくまで開発の下支えにすぎず、やはり最後はコンセプトとプロダクション
・チーム各自のスキルセットやバックグラウンドの多様性は大切

以上



3) Innovation in Project Delivery by Mark Johnson

この授業では、米国基準による建設プロジェクトの発注方法と、昨今この業界で起こっているDisruptiveなプレイヤーの同行を置いながら、いかに建設プロセスを刷新できるかに調整する。

実は隠れた名授業であり、僕自身としては日本のゼネコンの方式に慣れきってしまっているため、米国基準、国際基準での発注方式の基礎を身につけることに大いに役立った。

実際、Markは様々な建設コンサルを経験し、さらにHarvard大学のCaptal Managementをリードしていた筋金入りのコンストラクション・マネージャー。Capital Managerとは大学の保有する建物をどう改修し、あるいはキャンパスを広げてゆくかを大学の資金をつかってマネジメントを行う。
近作には、ハーバードのファインアーツ・ミュージアムがある。
旧美術館とコルビジェによるアートセンターを融合しつつ、増築した建物で、Markに雇われた建築家はレンゾ・ピアノ。


施行を担当したゼネコンの担当者がMarkの招きにより、レクチャーを行ってくれた。

















Markからクラスの前半では、各発注方式についての基礎的なレクチャーが行われる。すなわち、各方式のプロコンを中心に、どの手法がどの不動産開発事業に向いているか、などについて解き明かす。


4つのオーソドックスな発注方式は下記
・Design Bid Build
・Construction Management at Risk
・Design Build
・Integrated Project Delivery

それに加えて、昨今話題のモジュール方式や3Dプリンターを使った方式、いわゆるDisruptorによる話題にも中盤では触れる。




















ゲストスピーカーで特に自身の活動の延長線上にあるロールモデルといえる、DDGグループ創業者のPeterのプレゼンは掻き立てられるものがある。いわゆるアーキテクト・デベロッパーでありNYではFiancial Crisis後に創業し、今や超高層の開発に着手するまでに成長している不動産開発+デザインを行うグループでありNYを中心に活動している。


彼らのデザイン的手法としてはNYの既存ビルの素材感や装飾をトレースしつつ、その表現方法をモディファイする。
たとえ新しい開発であったとしても開口部の面積は既存のアールデコ調建物と合わせているため、タウンスケープに馴染みやすい。

アーキテクト・デベロッパーという職種があることをA+Uなどでも取り上げてよいと思う。





授業後半では、これらのインプットを元に、自身により建設方法や発注方式、あるいは周辺のサービスについてのイノベーションを考案する。最終成果物としてはビジネスプラン含む論文にまとめるというものである。

自身は建設産業での人手不足を解消しつつ、職人のモチベーションやスキルアップを促すアプリケーションサービスを考案した。
Uberにヒントを得た。つまり建設プロジェクトにおけるWork Forceや下請け業者の最適配置とマッチングサービスだ。こちらはDistinctionという評価を得られた。

実際に日本に限らず、今後新興するアジアの都市において労働市場の最適化においては必要なツールであろう。実現させるにはいろいろなリソースが必要ではあるが、近い将来に実現させたいプロジェクトのひとつとなった。

ある意味ではスマホでつながったゼネコンをつくるようなものだ。

ぶっちゃけ、Markは将来の自身の開発プロジェクトで是非、力になって欲しい笑
不動産デザイン学科のみならずGSDにおいて建設の方式全容を知るうえでは、必修にしてもいいくらいおすすめの授業。

気づきは下記
・米国基準の4方式の習得は必須
・Disruptorの活用がどれだけ進むか、この5年ほどで見えてきそう
・小規模プロジェクトにおいてもコンサルの活用やリスクコントロールを厳格に行うべき
・労働市場は人口動態と完全に連携しているため、今後の全世界的規模の都市化では課題
・MarkにCMを担当してほしい

以上。




4) Open Project 1

不動産デザイン学科での学びの集大成ともいえるプロジェクト型Thesisだ。こちらは最終学期に取りまとめるための、準備体操やインプット期間のようなものなので、あらためて最終学期の成果とともに記事にしたい。

下記に最終的に決定したタイトルとカバーページを記載する。
今回は以上!











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