2018年5月26日土曜日

サマー・インターン (その1 応募編:Asia Real Estate Trek)

米国での大学院留学を、より充実したものにするためには周知の通り、自分のVisionに合ったサマー・インターン先の確保と、そこでの実践経験習得がものを言う。

もちろん、ハーバード・デザインスクールにおいても例外ではなく、まさしくサマー・インターンでの経験とネットワークが卒業後の進路も決めることになる。

デザインスクールの多様に富んだ学科から、世界中のトップデザイン組織、企業や官庁へサマー・インターンへと出かける学生が、ひと夏を終えて一段と成長してくるのだ。

不動産デザイン学科の場合は特に、設計や施行、デベロッパー側からファイナンス側へとキャリアチェンジを試みる学生が多いため、サマー・インターンへの熱の入れ方も真剣そのものとなり、時には非常に厳しいコンペに晒されることになる。

僕の場合も例外ではないが、今回の留学でのサマー・インターンについては、その前提としてクラスメートの盟友、Samと主導した、ハーバード伝統のAsia Real Estate Trekのおかげで有り難くも、非常に充実度の高いサマー・インターンを経験することができた。

各方面への配慮から、次なるステップがはっきりするまでは、インターンの内容などについて、公にできない情報が多かったため、遅ればせながらではあるが、下記にAsia Real Estate Trekとともにまとめておきたい。


Asia Real Estate Trek (サマー・インターンへの登竜門)

このTrekは僕とSamがPresidentを務めたハーバード不動産デザイン学科のAsia Real Estate Associationが主催する、不動産系、投資系企業の訪問と知見の拡大を目指した新興アジア都市を中心とするTrekだ。
もちろん、トップ企業への訪問が多いことから、このTrek自体がサマー・インターン先とのネットワーキングと応募に大いに役立つことは想像に固くないだろう。

米国で不動産を専攻する場合は、参加を強くおすすめしたい。
実際に僕の場合は3つの企業からオファーをいただき、また他に5名、すぐにインターン先を決定した。

また、他にもNew York TrekやWest Coast Trekなどがあり、こちらもGoogleやWework、Airbnb、Related Companyなどの錚々たる企業を回れるため
おすすめである。留意点としてはVISAの問題から米国内企業へのインターンは需要と供給がマッチせず、米国外学生には少々不利なところがあるということだ。

Trekのメンバー構成は、総勢約20名程度を枠とし、ハーバード大学(デザインスクール+HBS)、MIT、コロンビア大学、コーネル大学などの学生から選抜されたメンバーが集まる。

ちなみに、毎年50名程度の応募があるため、レジュメや志望動機の本気具合、そしてチームへの貢献度などをもとに結構厳し目のスクリーニングがある。











僕が久しぶりの不動産学科における日本人だったということもあり、今回のAsia Real Estate Trekは、もちろんTokyo Partを組み込んだ。

東京の都市開発、マーケット、企業を知ってもらいたいという想いもあったし、僕自身、東京に不動産開発をテーマとして、どういうプレイヤーがいるのか、業界のランドスケープを見渡すためにも、是非とも行っておきたかった。

各都市で訪れた企業は下記の通り、デベロッパーから不動産投資会社(いわゆるReal Estate Private Equity)、ブローカーやコンサル等バラエティに富んで豪華だ。

各都市3日程度で移動も含めて、3都市合計で10日間の濃密な旅程だ。


香港 Part

・Blackstone
・Gaw Capital
・Phoenix Property Investors
・Swire Group
・Angelo Gordon Hong Kong
・CBRE Hong Kong
・KKR
・AEW Capital Management
・Hong Kong Land
・Oak Tree Capital

もちろん、各都市ごとにその都市をリードする出身者が、夜な夜な威信をかけたMixerを開催する。同じ企業を違う都市で廻っている場合も、違う部署を訪問しており、また都市によって全くマーケットが違うため、得られるものが被ることはない。














香港を皮切りに、連日の企業訪問とMixerを経験しながら、チームが出来上がってゆく。各企業からプレゼンテーションを行っていただき、それに対してのディスカッションやQ&Aが繰り広げられる。もちろん学生は皆前のめりなため、時間が過ぎても質問とネットワーキングのために充実した時間となる。

各企業の名前は聞いたことはあっても、実際にそのマーケットで何をしているのか、ビジネスドメインは何なのか、ディールや作品はどういったものがあるのか等、生の(First Hand)な話が聞ける機会はそうそうない。

香港パートの特徴はなんといっても、その国際性にあるだろう。
特に、Real Estate Private Equityは元気がよい。業務自体は英語で、広東語も使えると有利であることは間違いないが、近年のマーケットの中心が東京から香港に移動しつつあるため、国際性がますます高まっている。

トレック参加者のJob Huntingにおける一番人気都市は紛れもなく香港だ。国際性や言語的バリア、法人税や企業誘致力といった点では東京は3歩ほど劣っているというのが正直なところである。

MixerはSamの手引きにより、旨いHong Kong料理と、そして独特の世界観のあるClubだ。Work Hard, Play Hardである。


上海 Part

・Value Retail
・JLL Shanghai
・Shui On Land
・Fuson Group
・SOHO China
・Vanke China
・Tishman Speyer























SOHO Chinaが手がける複合開発からPudongエリアのSuper Tall Towerを望む。

まさに魔都、上海。中国市場の場合は不動産投資会社やReal Estate Private Equityにくらべて、過去10年に渡って勢力をつけてきたPre Saleを行うデベロッパーが圧倒的な存在感を放つ。

開発物件も案内していただきながらのプレゼンテーションは圧巻であり、スターアーキテクトを起用した様々な開発が目白押しである。上海のMixerもHong Kongに負けじと激ウマの上海料理でもてなしてくれる。




東京 Part

・Goldman Sachs Asset Management
・Goldman Sachs Realty Management 
・Morgan Stanley Capital KK
・Angelo Gordon Tokyo
・Mori Building + Mori Foundation
・Mitsui Fudosan
・Mitubishi Jisho
・CBRE Japan
・Nikken Sekkei






東京パートは今回が初の試みであったが、幸いにも様々な方面の方々にネットワークをご紹介いただき、錚々たる企業の方々とのMeet Upが実現した。

3都市目となる東京についた頃には、チームビルィングもしっかりとできており、各人がそれぞれのバックグラウンドと持ち味でチームをリードし、また企業訪問時の質問の純度も上がっていった。

業界全体のランドスケープをしっかりと掴みつつある頃合いであり、各プレイヤーがどのような事業形態をとっているのか、強みや弱みなども含めて一応の理解がついてきたからこそ、企業訪問の意味合いも一層高まっていた。

東京は訪問者にとっては開発し尽くされている印象だそうで、また三井不動産や三菱地所、森ビルといったデベロッパーの事業規模は、世界にも類をみないものである。

特に森ビルのプレゼンテーションは圧巻の一言で、そして開発手法からエリアマネジメントに至るまで、考えつくされた長期的ビジョンに基づく開発には一同感心をしていた。また中国出身者には上海環球中心(Shanghai World Financial Center)を森ビルがリスクを取りながらも創り上げたことで、知るものも多かった。


Goldman Sachs(AM、ASSG、Realty)やMorgan Stanley Capital KK(MSREFFで有名)、Angelo GordonといったいわゆるReal Estate Private Equity(REPE)はManaging Directorの方々から直々にプレゼンテーションもいただき、非常に有益な時間となった。各会社ごとに全くことなるカルチャーが面白い。


これは各企業のファンドが取るリスクとリターン、得意とする投資スタイルの違いによるものだ。

いわゆる外資系不動産ファンドは、業界も狭いため、様々な人材の流れ方や裏話も聞けた。







GSはASSG(Asia Special Situation Group)とAM(Asset Managemtn)/Realtyでは、そもそも投資資金の拠出元が異なるため、投資スタンスが異なる。

ASSGはGSの内部資金を使っているため、リターンが出るものであれば、さまざまなものに独自で判断をし、積極的に投資をする。Distressから、星野リゾートとの合弁事業など有名なものから、太陽光など様々。口外できない内容が多いとのこと。

AM/RealtyはLimited Partnerから資金を募ってファンドを構成するいわゆるPrivate Equity。最近有名なものはMoxy Hotel TokyoとKyotoへの投資だろうか。また、こちらでも太陽光はほぼ1/3のAsset Under Managementを占めるという。その他はClass Aオフィスなど、コアからコアプラスのいわゆるミドルリスク・ミドルリターンの投資が主流。




Morgan Stanley Capital KKはいわゆるMSREFFとしてリーマン・ショック前にかなりの隆盛を極めた、ハイリスク・ハイリターン型のOpportunisticファンドの代表例であり、その頃はSWFCや日本中のANAインターコンチネンタルへの投資を手がけていた。
現在もリーマン・ショックからの痛手を埋めつつV字回復し、業界をリードしている。近年ではPrime Asiaと呼ばれる長期ミドルリターン型のコアファンドも設立している。

MSREFF卒業生には他のファンドで活躍する人も多数いる。Green OakやGSのASSG、Blackstone Japanなどさまざまだ。情報とネットワークが命のREPEでは非常に強みがある。



ユニークなのは、香港Partで初めて知ったAngelo GordonというPrivate Equityで、GSやMorgan Stanleyと同じく米国発祥。もともとはDistress投資に強みがり、Distressの担保として不動産を獲得してゆくうちに急成長をしたファンドだ。

特にAdd Value投資が得意で、香港での事例や東京の近年のトラックレコードを実際に見せてもらい、知っているビルが結構あった。

オフィスからホテルへのコンバージョンを行ったり、歴史的建造物と融合させた商業施設を開発したりと、建築側からの発想によりAdd Valueをし、運用してゆくのが面白い。チームも少数精鋭で、ディレクターの言葉を借りれば、彼らのビジネスはPeople Businessであり、自分のディールはAcqisitionからUnderwriting、設計者選定やアセットマネジメント、そしてDispositionまで全て面倒をみるため、彼らからするとMy Baby Projectなのである。

日本では、Plantec AssociatesやGensler、日建設計や竹中工務店といったデザイン性と経済合理性を両立する建築事務所との協働が多く、またテナントもLVMHを入れたりと面白い。近年では青山ベルコモンズの再開発を取りまとめたことでも知られる。
また、数少ないGround Up Project、いわゆる開発案件も手がけるPEのうちの一つだ。東京代表はHarvard Collage出身者でありながら、京都大学院で建築を学んでいたというバックグラウンド。


Mixerは我が家での手巻き寿司パーティや、築地訪問、そして友人のレストラン(フレンチ焼き鳥)で舌鼓、もちろんカラオケなど、とにかく日本の食文化の豊かさに浸ってもらった。


このTrekがきっかけとなり、結果的にMorgan Stanley Capital KK、Angelo Gordon Tokyo、Phoenix Property Investors Japanからサマー・インターンのオファーをいただくことになったが、次回では応募やインタビュー、そのインターン内容について触れたいと思う。



0 件のコメント:

コメントを投稿