2016年11月1日火曜日

伝説の授業 Lecture with the Legend

ハーバードビジネス・スクール(HBS)の不動産系授業で30年以上に渡って教鞭をとってきた伝説の教授をご存知だろうか。もちろん、実業家としても数々の成功を収めてきた人気教授。

William Poorvu氏だ。

我がデザインスクールの不動産学科でも領域とカレッジを超えた数々の授業が提供されるが、この日は僕にとって特別な日だった。

Poorvu教授が我が不動産デザイン学科で、彼得意のケーススタディをもとに教鞭を取る日だ。
実はPoorvu教授がHBSで教鞭をとっていた人気授業が書籍となって約9年前に日本でも翻訳本が出版されていた。


この翻訳本は、不動産の実在プレイヤーがどのようにゲームを組み立て、創造性をもってコマを進めていったか、あるいは脱落していったかが活き活きと表現されている。
僕がちょうど大学院を出たころに手にした本で、不動産から建築デザイン、都市デザインをリードしてゆくという活動のきっかけを与えてくれた非常に重要な本の1つだ。そしてあっという間に9年の月日が流れていたことに今更ながらに気づき、驚いた。

授業は、事前に与えられたNew York CityのBattery Park CityについてのケースとBoston Fan Pierについてのケースを読み込んだ上で、自分なりの比較を行い、検討し、判断を下すものである。

poorve教授を囲む生徒。もちろん各学科の先生方も我先にと参加する。


実際にそれぞれのプロジェクトは不動産事業として、段階的な紆余曲折を20年間におよび、経ながら、光と影の部分を包含し、今の姿へと至っている。
その中で、各段階で関わったプレイヤー(デベロッパー、金融、行政、パートナー企業、テナント、地元)がどのように行動し、その結果どういう事態が引き起こされたかを描いていて、ケースを読んでいるだけでもドラマのようである。

クラス内ではPoorvu教授が、あるき回りながら、次々に生徒を指してゆき、プレイヤーとしての判断を求めてゆく。そしてさらにWhy? and Why?と答えを追求してゆき、プレイヤーの心理や感心=Appetiteをあぶり出す。
そして、実際に各プレイヤーが取った判断や行動を最後に紹介する。

印象深かったのは、不動産の大きな潮流を考えるうえで、教授の示すタイムフレームである。

「10年のマーケットサイクルと5年の人間の記憶のサイクルで不動産は動いている。」

という金言だ。

確かにここ20年の不動産のサイクルを見ても、また長期的な不動産開発プロジェクトにおいてもこのサイクルが当てはまるし、不動産自体が人間の生活や成長の受け皿である限り、このサイクルから逃れることは難しいだろう。

次のサイクルは2018年あたりなので、それまでに諸々準備をしておきたい限りである。

熱狂覚めやらぬ中で、時間切れとなり授業自体はあっという間に終わってしまったが、授業後に早速、Poorvu教授に9年前に購入した訳本を握りしめ駆け寄った。
そして、自身が不動産の魅力に気づくきっかけを与えてくれたことへの御礼を述べ、固く握手を交わした。

教授も日本語版を出したときのことを思い出して喜んでくれたことはよかった。
もちろん、サインをいただき記念撮影。
感無量である。

不動産開発に対する、深いが直球でシンプルな洞察や「Why?」を問い続ける姿勢、そして実業家としても数々の成功を収めてきた師から学んだことを、これからの活動に是非活かしたい。

Poorvu教授とともに。快く訳本のサインに応じてくれた。


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