もちろん、Final Weekに向けて卒業を目前にした学生は黙々と研究を続けている。
さて、ハーバードデザインスクールへのapplication tipsを以前に自分なりにまとめたが、今回はそろそろ公募が始まるフルブライト奨学金のapplication tipsについてまとめておきたい。
まずはネットで様々なTipsが落ちているので、先人の知恵と記録を参考にしてもらいつつ、僕なりのTipsを共有できればと思う。
僕自身、1度目のフルブライト候補生時に第一志望からのwaiting listだったため、2度の候補生期間を経ての渡米だった。2回のアプライを行っているので、ある意味ではアプライのベテランとも言えるし、どうしようもなく手のかかる奴とも言える。2度も候補生として可能性を見てくれたフルブライトには感謝してもしきれない。
写真はフルブライト・エンリッチメント・セミナーのヒューストン大会の様子。世界70ヶ国以上から代表となるフルブライターが集まっての共同セミナーと貢献活動。
他の奨学金と併願する方々も多いと思うが、フルブライトプログラムは奨学金を得るという実質的なメリットよりも、さらに大きな権利とフルブライターとしての使命が漏れなくついてくる。是非、挑戦して欲しい。
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ヒューストン、NASA宇宙基地博物館での記念撮影 |
1)5月末 オンラインアプリケーション
要求されるマテリアルはそれほど強烈なものではなく、かつ聞いたところによると、基準を越えていればほぼ通過とのこと。
TOEFL 80以上
こちらは、現在スコアメイキングを始めたアプリカントも多いと思うので、80を越えてれば一応はパス
エッセイ・研究趣旨
自身の研究や活動を、さらに米国で続ける理由、そして研究計画をまとめる。
流暢な英語でのエッセイというよりは明快さと、地に足のついた実績、情熱が求められる。比較的短くA4一枚程度だったかと思うが、ここで骨子をまとめておくと、年末に向けてのスクールビジットやアプライ、インタビューに向けて、非常に有利。
トップスクールを狙う学生は、このプロセスを経るだけでもスタートダッシュが効くので是非取り組んでみてほしい。
オンラインアプリケーションの結果は6月の中旬頃に発表となる。
2)7月末 書類応募
オンラインアプリケーション通過の知らせを受け取る前から即時動き始めたほうがよいのが、この応募書類準備。
実はかなりの手間と時間がかかるので、タイムラインに注意しつつ、オンラインアプリケーションを送信した直後からの行動開始を推奨!
エッセイ
応募にあたり、エッセイ+研究計画書、合計A4約3枚を英語と日本語で執筆。
オンラインアプリケーション時のものを軸に、さらにブラッシュアップ。具体的な候補大学とプログラム名まで見越しての研究ターゲットが求められるので、各大学のWebサイトなどで下準備を行う。
米国アカデミアを通じて、自分が何をどのように研究し知識獲得し、日本に貢献できるかが重要。特に、候補大学での研究室や教授名がはっきりしている場合は書く。
ここでも、やはりなぜ米国なのか?日本ではダメ?欧州でもできるのでは?という疑問符に明快に応えられるように。
とくにフルブライトはひとつの研究分野に対して、原則1名と決まっているので、漠然と建築デザインと書いてしまうと、おそらく響かない。同様に漠然としたMBAも競争率が激しく厳しい。
僕のテーマなどを具体的に知りたい場合はFulbrightサイトでタイトルを見ていただくか、個人的にコンタクトください。
このエッセイを仕上げたことは僕にとっても自信となったし、面接に向けたスピーキングの基礎ともなった。
レジュメ
エッセイでは伝えきれない、自身のこれまでの実績や、Capabilityを示そう。
一般的な学歴や職歴もある程度納得感が必要だが、それ以外にも、どのようなSocial Impactを行ってきたか、などの内容が響くように思う。レジュメの書式に慣れていない人にとっても自分の歴史を見直すいい機会だろう。
賞歴、課外活動、熱中していることや非営利、ボランティア活動、自分のエッセイストーリーを強化してくれる人物像をクリアに示せれば、強力な武器となる。
推薦状
3通必要なのだが、このタイムラインで推薦状をスムーズに手に入れることが、結構難しいため、早めに動きはじめたほうがよい。
僕の場合は学術関係、仕事関係、そして非営利活動関系からの推薦状とした。こちらも、もちろん自身の各研究や活動の内容を補強してくれる、言い換えれば第三者として証明してくれる方々が望ましい。
TOEFLスコアメイキング
実はオンラインアプリケーションでは80点が足切りだったが、この時点では上記のエッセイに記載した候補大学に入るために最低限必要と思われる足切りラインがチェックされていると思われる。
たとえばビジネス・スクールであれば109点以上、GSDであれば96点以上(実際は104点以上は欲しい)など。
最終的に面接に呼ばれて、候補生としての仮合格を出すことになれば、その候補生が大学に受け入れられることを前提としているため、書類審査時である程度の安心感のあるアプリカントを選ぼうとする力が、もちろん働く。
この時点で点数の下駄を短期間で履かせやすいのは、ReadingとWritingだと思うのでエッセイ等に引き続き、ビシバシ書きまくってほしい。
また、Speakingもコミュニケーションに難がないことを示すためにも20は取っておきたい。なんせ最終ゴールはFulbrighterとしてMutual Understandingに自らリーダーシップを発揮して貢献することなのだから。
Speakingについて難がある人は、是非E4TGのDonaldを訪れてほしい。最低限3ヶ月、汗びっしょりになりながらついてゆけば20点は突破できるだろう。おそらくいろいろな意味で足切りとなる24点も何度かテストに挑戦すれば届くはず。
僕自身、Donaldに非常にお世話になったし、今でもE4TG時に習った根幹は生きている。
GPA
あまり足切りになることはないが、わざわざ卒業大学に出向いて、すべてのデータを引っ張り出し、サインしてもらい封をして、7通送付という手間がかかるため早めに動くべき。
特に大学は夏休み期間と重なっているため、間違っても7月末の応募書類郵送締め切り間際なんかに大学にあわててゆかないこと。5月末にオンラインを出し終わったら、速攻で母校の事務局に問い合わせることを薦める。
その他
もし、自分の研究分野で先輩としてフルブライト生として渡米している、あるいは帰国している方がいたら、エッセイをブラッシュアップし始める際に実際に会ってみる。フルブライターの人となりは大先輩から脈々と受け継がれているので、是非その考え方や人間性から、ヒントを感じ取って欲しい。ノーベル賞受賞者や教授、政財界にも先人たちはいるし、調べると結構でてくるので、自分の分野に近い方々に思い切ってコンタクトをとってみて欲しい。
僕の場合も建築系や都市計画系、そして元区長の方など自分の研究分野の方に貴重なアドバイスをいただくことができたし、本気でフルブライトに応募したいという想いを何度も確認できた。
3)11月末前後 面接
書類審査通過のお知らせと同時に突如通知されるのが、面接の案内。
11月前半から中旬にかけて、書類審査の合否とともにフルブライト本部(溜池山王)に呼ばれての面接の時間が通知される。
これについてのTIPSは、生々しくその日の状況を記載してくれているブログもあるので、参考にしてもらいつつ、自分なりの工夫などを伝えておきたい。
セッティング
フルブライト事務局方4名程度、専門領域の先生方4名程度の合計8名程度が面接室に登場する。質問を行うのは基本的に専門領域の先生方4名。ほぼフルブライター。
もちろん英語のみでの面接。時間は15分から20分程度。
自分の場合は和気藹々とした雰囲気からスタートしたが、すぐに具体的な研究内容の質問や実績の内容となった。
応募大学との相性確認
面接までの間にキャンパスビジットは必ずすべき。そしてアカデミック・アドバイザーとなる教授とも、会えるなら相性を確かめておこう。建築や都市計画などの専門領域であれば、かならずなぜGSDなのか?なぜこのプログラムなのか?と聞かれるので、各大学のプログラムの特徴や大学の雰囲気との相性も語れると強い。
また、面接といいながらも、みんな志をもって海外留学を目指すのだからと、素晴らしいアドバイスをくれたりもする。僕の場合は、営利と非営利型がバランスした研究が得意な大学とそうでない大学があることをアドバイスいただいた。
ハーバードはどちらかというと、「選べる」といったところ。ケネディ政策大学院との共同授業やUrban Planningとの共同授業を選べばPublic Benefitにどう貢献できるかという視点。ビジネス・スクールとの共同授業であれば、もちろん営利的視点で社会にどうインパクトを与えるか。だ。
それを考えれば、ひとつのDegreeではなくDouble Degreeを取ることで、自身の研究コアを達成出来る場合もあるという示唆。たとえばコロンビア大学も候補にしていた僕の場合はGSAPPのReal EstateとUrban PlanningのDouble Degreeの組み合わせなどだ。
なぜアメリカか?
再三聞かれる質問。エッセイでも書いたと思うので、是非具体的な自分のキャンパスビジットでの体験などを元に語ってほしい。自身の体験から語ることが地に足のついた発言やその先の情熱へつながるだろう。
ポートフォリオ
必須ではないけれど、僕の場合は建築系バックグラウンドということもあり、2年目の面接には印刷したポートフォリオを持参し、冒頭に手渡した。実際にその一年で石巻でのコミュニティセンター設計の実績などヴィジュアルに伝わることもあったため、自身のエッセイストーリーに沿っているものであれば、積極的に見せてよいと思う。
英語力、ひととなり
実は発音などはある程度、割り引いて見てくれる。それよりも明確にゆっくりでもよいから伝えたいことを正確に伝えることが重要。
それよりも大切なのがひととなり。
上記にも書いたが、自分の研究分野を通じて、その分野をリードし、各国からくるフルブライターとの相互理解を深めることができるだろう人材を欲している。あたりまえだが、自然な笑顔と静かな情熱を持って、夢を語ってほしい。
面接官は実は自分の研究を支えてくれる、よきメンターでもあり大先輩であり、同志でもあることを忘れずに。
自分の場合は、トリッキーなことを聞かれたとか、圧迫とかがあったというわけではなく、あくまでも専門領域の先生から研究に関する非常に誠実な質問やコミュニケーションがあったし、面接が終わったあとは、いいアドバイスをいただいたりディスカッションができたことへの感謝の念と爽やかさが残った感じ。
逆に自分を大きくも小さくも見せる必要がなく、この半年の思考錯誤を通じて自分の等身大とやってきたことを伝えられたことがよかったと思う。
フルブライターの候補生合格者オリエンテーションにゆけば、一目瞭然なのだが、それぞれの候補生が、各分野でリーダーシップを発揮し、そして人間的にも素晴らしい人ばかりなのだ。そういう意味でも面接前には、その空気を感じることはできないので、フルブライターの先輩方々に直に会って空気感を感じ取っておくことをオススメしたい。
面接の最初と最後には、心からの御礼を述べるべきだし、実際に自然とそうしたくなるはずだ。
以上、3段階でのセレクションが設けられ、そして半年に渡る非常に長いアプリケーションプロセスだが、12月初旬に合否結果が出た暁には、フルブライト候補生という地位が与えられる。
このフルブライト候補生という肩書は、実際に研究機関から受け入れが認められてはじめて正式なフルブライターとして渡米できるという意味だ。
ただ、もちろんフルブライド候補生という肩書は大学へのアプリケーションの際にある程度の効力を発揮するので、レジュメに書くことをお忘れなく。
お世話になったフルブライターの大先輩に大学への推薦状をお願いしてもいいだろう。僕の場合も、今でもメンターである、とある大先輩に一筆お願いした。
一人でも多くの方がフルブライターとして米国での研究を元に、日本のみならず国際社会で活躍して欲しいので、記事以上に必要な情報があれば是非気軽にコンタクトして欲しい。
フルブライトのデメリットと思われている1年のみのサポートや2年の自国滞在義務については、正直言って補って余りあるメリットが今は見えるため、心配しなくてよいと思う。
そういった条件面(支援額、自国貢献義務)でのみ物事を判断するアプリカントは見透かされているようにも思うし、そうではないリーダーたちが世界の相互理解に貢献するのだから。