前回に引き続き、実践編として、サマー・インターンでの経験や学びについてまとめておきたい。
Asia Real Estate Trekが提供してくれたサマー・インターンへの門戸を開き、実際に働いてみるために、早速行動を開始した。
実は、外資系金融(GS、Morgan Stanley、JP Morgan etc)やコンサル系(ボスコン、マッキンゼー)は、早速一年目の秋に開催されるボストン・キャリアフォーラムでインターンが決定されることが多い。
これは海外からのサマー・インターンが卒業後の採用を決めるうえでの登竜門となるからだ。
僕の場合は、まだ不動産を通じてのヴィジョンを広げたい時期だったし、様々なオプションを見ておきたかったのでボストン・キャリアフォーラムは見学する程度に留めた。ただし気づきも多く、いわゆるReal Estate Private Equityについては少数精鋭で中途採用が多いことから新卒に重きをおいているボスキャリで有用な情報を得るにはいたらなかったのだ。
逆に自分の意志を固めるうえでもよい機会だった。ネームバリューによらない仕事の仕方をしたいということ。即戦力として責任ある立場でのコミットメントがしたいこと。そして自身の行っている建築と不動産活動を加速してくれる仕事であること。
話は戻り、早速Trek中にネットワーキングできた各社Managing Directorと、面談やランチのセッティングをさせていただき、結果的にMorgan Stanley Capital KKとAngelo Gordon & Co LLC、Phoenix Property Investorsからサマー・インターンのオファーをいただいた。
実際にはMorgan Stanley Capital KK (MSC)にて約10週間、Angelo Gordon(AG)にて2日間のインターンを行った。
各企業の特徴は(その1応募編)で記載した通り。
言えるのは各3社のMDは皆、リーマンショックを経験し、なおかつ今でも組織をリードしているため、非常に人格者であり、そして大胆さと慎重さを併せ持っていながら気前がよい、ということ。またそれぞれに投資に対しての得意な戦略があるというのも面白い。
応募についてのTipsは下記
・一年目で習得したProforma構築スキルを表すマテリアルを先方と共有する
・Investment Memoを作成した資料を共有する
(特にRick PeiserのFinal Projectがよいだろう)
・ランチはチームとの相性を図るもの。態度をはっきりと決めてゆくと同時に自然体で
・Aqiuisition、Fund Raising、Asset Managementなどのチームの役割を頭に入れる
・インタビューは英語と日本語両方なので、どちらでも答えられるように
・コールの場合は立って電話するのがおすすめ。ポジティブな気持ちが伝わる
Morgan Stanley Capital KK(MSC) 編
具体的に関わったディールの名前は挙げられないので、概要のみまとめておく
ちなみにディールの最中はコードネームで呼ばれている。
MSCの特徴はAquisitionチームとAsset Managementチームが別れていてそれぞれ10人と15人程度、またバックオフィスから構成される。
各ディールの流れは下記(REPEほぼ共通)
Underwriting→ICOMM(投資委員会プレゼン)→Acquisition→Renovation or Conversion→Lease out→Property Management→Disposition
・某ホテルのリノベーションとブランド誘致
40年以上経つかなり古びたホテルを買い取り、耐震改修を行いつつ、全面階層を行い、海外ホテルブランドを誘致するディール。
Total Capitalizationは約60MM USD。当然ながら建築系バックグラウンドを活かすべきプロジェクトだったため、充実感を持って担当させていただいた。
・某ショッピングセンター
近郊都市の駅前に位置するショッピングセンターのアセットマネジメント段階。改装も同時に行いつつ、いかに有力なテナントを目標賃料で誘致するかが鍵。
Total Capitalizationは約80MM USD。アセットマネジメントチームの中で動かせていただきつつ、リーシングと管理がいかにディールの中で大切か、そして機会創出についても実は「床」の動きを追いかけることで、発見できるものがあることを学ぶ。
・某社宅、オフィス、賃貸住宅ポートフォリオ
都心部および核都市における混成型のポートフォリオ構築のためのUnderwriting。こちらは初めての本格的なAcquisitionに向けたUnderwritingを担当させていただき、異常にエキサイティングな投資委員会も経験させていただいた。各物件をポートフォリオに入れるか否か、どういったリスクをとるのか、どのアップサイドの可能性を見るのかなど、様々な視点を学ぶ。
・Final Presentation
こちらは、各インターン生が最終日に経過の成果を発表するうえでも重要となるプレゼンテーション。僕の場合は以前より興味があり、自身でも実践していたModern Disruptorとの協働の可能性についてまとめた。いわゆるAirbnbやWeworkを保有不動産で展開した場合、ということだ。集大成としてInvestment Memo形式でまとめることができたため、Morgan Stanleyとの共同研究のような形でいい成果が出た。ただし、実際にMSCのファンドに組み込むとなるとVolatilityが高かったり法的グレーゾーンが多いこと、またCapital Marketではまだこういった投資商材が確立されていないため、まだ実践に組み込むこと難しい判断だった。
Angelo Gordon & Co. LLC(AG) 編
こちらも具体的に関わったディールの名前は挙げられないので、概要のみまとめておく
こちらは短期間での経験となったため、今までのディールで実際につくりあげた物件を東京近郊に限ってツアーガイドしていただきながら、また少し建築的視点からのAdd Valueについて関わらせていただいた。また、ボストンに戻ってからもメールベースでのヘルプを行った。
AGのチームの特徴はなんと言っても少数精鋭。そしてアウトソース先と上手に連携しながら、Add Value思考のディールを得意とする。各ディール・オフィサーはMy Baby Projectという表現にみられるように、全ての面倒を自身の最良により見る。
プロパティ・ツアーでは代表的なディールである3物件を回った。どれもAGの投資フィロソフィーを示す非常に面白い事例だ。
・都内某商業ビル
プランテックとともに外装も一新し、そして道路付けを少し変更してのテナント面積確保というウルトラCを行った物件を始めに見せていただいた。
こちらは、以前の仕事場にも近かったこともあり、じつは知っていたビルだったが、このリノベーションに、こういったファンドのメカニズムが働いていたことを今となっては理解できるのが有り難い。
・都内Class A超高層オフィス
こちらは某デベロッパーによる有名なビルでリーマンショック前後の取引により、様々なファンドの手に渡った。こちらのエントランス部を大々的にリノベーションし、さらに飲食店を誘致しやすいように動線なども変更。
最終的には非常にいいPerfromanceのディールだったとのこと。
・都内繁華街に位置する小規模商業ビル
こちらも外観内装ともにかなりのリノベーションを行っており、実際に新築のような様相まで呈している。テナントの総入れ替えを行いながら目標賃料まで持っていったとのこと。
・建築的Add Value
また、現在検討中との再開発用地について、総合設計によるValue Upが見込めるかどうかの検討を担当させていただいた。こちらは実際に再開発となると出口がデベロッパー等になることから、このPerspectiveがAcqisition段階で見通すことができれば、相当のアップサイドシナリオとなることになる。ここはゼネコン設計部出身者としての腕の見せどころである。
最終的にはどちらの組織も、チームのほぼ全員と実際のディール、ランチやディナーを通じてじっくりとお話させていただい、それぞれのカルチャーやディール・オフィサーのあり方についての違いなども理解でき、これ以上にない有意義なインターンとなった。
インターン前にRickやApeseche、そしてHBSのNoriのクラスを取っていて本当によかった。そこで習得した技術や考え方が、インターンの入り口からビシバシと役立っていた。これら不動産デザイン学科での学びと、現実世界のディールの一端を担えたことで、見えるものがよりクリアになった。
この機会を与えてくれた各社のMDは僕にとってはもはやMentorであり、今後も大切にしたい繋がりである。心から感謝を申し上げる。
ハーバード流不動産デザイン留学記
フルブライターとして2016年からハーバード建築デザイン大学院不動産デザインコースに留学する建築家Masaのブログ。
2018年5月27日日曜日
2018年5月26日土曜日
サマー・インターン (その1 応募編:Asia Real Estate Trek)
米国での大学院留学を、より充実したものにするためには周知の通り、自分のVisionに合ったサマー・インターン先の確保と、そこでの実践経験習得がものを言う。
もちろん、ハーバード・デザインスクールにおいても例外ではなく、まさしくサマー・インターンでの経験とネットワークが卒業後の進路も決めることになる。
デザインスクールの多様に富んだ学科から、世界中のトップデザイン組織、企業や官庁へサマー・インターンへと出かける学生が、ひと夏を終えて一段と成長してくるのだ。
不動産デザイン学科の場合は特に、設計や施行、デベロッパー側からファイナンス側へとキャリアチェンジを試みる学生が多いため、サマー・インターンへの熱の入れ方も真剣そのものとなり、時には非常に厳しいコンペに晒されることになる。
僕の場合も例外ではないが、今回の留学でのサマー・インターンについては、その前提としてクラスメートの盟友、Samと主導した、ハーバード伝統のAsia Real Estate Trekのおかげで有り難くも、非常に充実度の高いサマー・インターンを経験することができた。
各方面への配慮から、次なるステップがはっきりするまでは、インターンの内容などについて、公にできない情報が多かったため、遅ればせながらではあるが、下記にAsia Real Estate Trekとともにまとめておきたい。
Asia Real Estate Trek (サマー・インターンへの登竜門)
このTrekは僕とSamがPresidentを務めたハーバード不動産デザイン学科のAsia Real Estate Associationが主催する、不動産系、投資系企業の訪問と知見の拡大を目指した新興アジア都市を中心とするTrekだ。
もちろん、トップ企業への訪問が多いことから、このTrek自体がサマー・インターン先とのネットワーキングと応募に大いに役立つことは想像に固くないだろう。
米国で不動産を専攻する場合は、参加を強くおすすめしたい。
実際に僕の場合は3つの企業からオファーをいただき、また他に5名、すぐにインターン先を決定した。
また、他にもNew York TrekやWest Coast Trekなどがあり、こちらもGoogleやWework、Airbnb、Related Companyなどの錚々たる企業を回れるため
おすすめである。留意点としてはVISAの問題から米国内企業へのインターンは需要と供給がマッチせず、米国外学生には少々不利なところがあるということだ。
Trekのメンバー構成は、総勢約20名程度を枠とし、ハーバード大学(デザインスクール+HBS)、MIT、コロンビア大学、コーネル大学などの学生から選抜されたメンバーが集まる。
ちなみに、毎年50名程度の応募があるため、レジュメや志望動機の本気具合、そしてチームへの貢献度などをもとに結構厳し目のスクリーニングがある。
僕が久しぶりの不動産学科における日本人だったということもあり、今回のAsia Real Estate Trekは、もちろんTokyo Partを組み込んだ。
東京の都市開発、マーケット、企業を知ってもらいたいという想いもあったし、僕自身、東京に不動産開発をテーマとして、どういうプレイヤーがいるのか、業界のランドスケープを見渡すためにも、是非とも行っておきたかった。
各都市で訪れた企業は下記の通り、デベロッパーから不動産投資会社(いわゆるReal Estate Private Equity)、ブローカーやコンサル等バラエティに富んで豪華だ。
各都市3日程度で移動も含めて、3都市合計で10日間の濃密な旅程だ。
香港 Part
香港を皮切りに、連日の企業訪問とMixerを経験しながら、チームが出来上がってゆく。各企業からプレゼンテーションを行っていただき、それに対してのディスカッションやQ&Aが繰り広げられる。もちろん学生は皆前のめりなため、時間が過ぎても質問とネットワーキングのために充実した時間となる。
各企業の名前は聞いたことはあっても、実際にそのマーケットで何をしているのか、ビジネスドメインは何なのか、ディールや作品はどういったものがあるのか等、生の(First Hand)な話が聞ける機会はそうそうない。
香港パートの特徴はなんといっても、その国際性にあるだろう。
特に、Real Estate Private Equityは元気がよい。業務自体は英語で、広東語も使えると有利であることは間違いないが、近年のマーケットの中心が東京から香港に移動しつつあるため、国際性がますます高まっている。
トレック参加者のJob Huntingにおける一番人気都市は紛れもなく香港だ。国際性や言語的バリア、法人税や企業誘致力といった点では東京は3歩ほど劣っているというのが正直なところである。
MixerはSamの手引きにより、旨いHong Kong料理と、そして独特の世界観のあるClubだ。Work Hard, Play Hardである。
上海 Part
SOHO Chinaが手がける複合開発からPudongエリアのSuper Tall Towerを望む。
まさに魔都、上海。中国市場の場合は不動産投資会社やReal Estate Private Equityにくらべて、過去10年に渡って勢力をつけてきたPre Saleを行うデベロッパーが圧倒的な存在感を放つ。
開発物件も案内していただきながらのプレゼンテーションは圧巻であり、スターアーキテクトを起用した様々な開発が目白押しである。上海のMixerもHong Kongに負けじと激ウマの上海料理でもてなしてくれる。
東京 Part
もちろん、ハーバード・デザインスクールにおいても例外ではなく、まさしくサマー・インターンでの経験とネットワークが卒業後の進路も決めることになる。
デザインスクールの多様に富んだ学科から、世界中のトップデザイン組織、企業や官庁へサマー・インターンへと出かける学生が、ひと夏を終えて一段と成長してくるのだ。
不動産デザイン学科の場合は特に、設計や施行、デベロッパー側からファイナンス側へとキャリアチェンジを試みる学生が多いため、サマー・インターンへの熱の入れ方も真剣そのものとなり、時には非常に厳しいコンペに晒されることになる。
僕の場合も例外ではないが、今回の留学でのサマー・インターンについては、その前提としてクラスメートの盟友、Samと主導した、ハーバード伝統のAsia Real Estate Trekのおかげで有り難くも、非常に充実度の高いサマー・インターンを経験することができた。
各方面への配慮から、次なるステップがはっきりするまでは、インターンの内容などについて、公にできない情報が多かったため、遅ればせながらではあるが、下記にAsia Real Estate Trekとともにまとめておきたい。
Asia Real Estate Trek (サマー・インターンへの登竜門)
このTrekは僕とSamがPresidentを務めたハーバード不動産デザイン学科のAsia Real Estate Associationが主催する、不動産系、投資系企業の訪問と知見の拡大を目指した新興アジア都市を中心とするTrekだ。
もちろん、トップ企業への訪問が多いことから、このTrek自体がサマー・インターン先とのネットワーキングと応募に大いに役立つことは想像に固くないだろう。
米国で不動産を専攻する場合は、参加を強くおすすめしたい。
実際に僕の場合は3つの企業からオファーをいただき、また他に5名、すぐにインターン先を決定した。
また、他にもNew York TrekやWest Coast Trekなどがあり、こちらもGoogleやWework、Airbnb、Related Companyなどの錚々たる企業を回れるため
おすすめである。留意点としてはVISAの問題から米国内企業へのインターンは需要と供給がマッチせず、米国外学生には少々不利なところがあるということだ。
Trekのメンバー構成は、総勢約20名程度を枠とし、ハーバード大学(デザインスクール+HBS)、MIT、コロンビア大学、コーネル大学などの学生から選抜されたメンバーが集まる。
ちなみに、毎年50名程度の応募があるため、レジュメや志望動機の本気具合、そしてチームへの貢献度などをもとに結構厳し目のスクリーニングがある。
僕が久しぶりの不動産学科における日本人だったということもあり、今回のAsia Real Estate Trekは、もちろんTokyo Partを組み込んだ。
東京の都市開発、マーケット、企業を知ってもらいたいという想いもあったし、僕自身、東京に不動産開発をテーマとして、どういうプレイヤーがいるのか、業界のランドスケープを見渡すためにも、是非とも行っておきたかった。
各都市で訪れた企業は下記の通り、デベロッパーから不動産投資会社(いわゆるReal Estate Private Equity)、ブローカーやコンサル等バラエティに富んで豪華だ。
各都市3日程度で移動も含めて、3都市合計で10日間の濃密な旅程だ。
香港 Part
・Blackstone
・Gaw Capital
・Phoenix Property Investors
・Swire Group
・Angelo Gordon Hong Kong
・CBRE Hong Kong
・KKR
・AEW Capital Management
・Hong Kong Land
・Oak Tree Capital
もちろん、各都市ごとにその都市をリードする出身者が、夜な夜な威信をかけたMixerを開催する。同じ企業を違う都市で廻っている場合も、違う部署を訪問しており、また都市によって全くマーケットが違うため、得られるものが被ることはない。
香港を皮切りに、連日の企業訪問とMixerを経験しながら、チームが出来上がってゆく。各企業からプレゼンテーションを行っていただき、それに対してのディスカッションやQ&Aが繰り広げられる。もちろん学生は皆前のめりなため、時間が過ぎても質問とネットワーキングのために充実した時間となる。
各企業の名前は聞いたことはあっても、実際にそのマーケットで何をしているのか、ビジネスドメインは何なのか、ディールや作品はどういったものがあるのか等、生の(First Hand)な話が聞ける機会はそうそうない。
香港パートの特徴はなんといっても、その国際性にあるだろう。
特に、Real Estate Private Equityは元気がよい。業務自体は英語で、広東語も使えると有利であることは間違いないが、近年のマーケットの中心が東京から香港に移動しつつあるため、国際性がますます高まっている。
トレック参加者のJob Huntingにおける一番人気都市は紛れもなく香港だ。国際性や言語的バリア、法人税や企業誘致力といった点では東京は3歩ほど劣っているというのが正直なところである。
MixerはSamの手引きにより、旨いHong Kong料理と、そして独特の世界観のあるClubだ。Work Hard, Play Hardである。
上海 Part
・Value Retail
・JLL Shanghai
・Shui On Land
・Fuson Group
・SOHO China
・Vanke China
・Tishman Speyer
SOHO Chinaが手がける複合開発からPudongエリアのSuper Tall Towerを望む。
まさに魔都、上海。中国市場の場合は不動産投資会社やReal Estate Private Equityにくらべて、過去10年に渡って勢力をつけてきたPre Saleを行うデベロッパーが圧倒的な存在感を放つ。
開発物件も案内していただきながらのプレゼンテーションは圧巻であり、スターアーキテクトを起用した様々な開発が目白押しである。上海のMixerもHong Kongに負けじと激ウマの上海料理でもてなしてくれる。
東京 Part
・Goldman Sachs Asset Management
・Goldman Sachs Realty Management
・Morgan Stanley Capital KK
・Angelo Gordon Tokyo
・Mori Building + Mori Foundation
・Mitsui Fudosan
・Mitubishi Jisho
・CBRE Japan
・Nikken Sekkei
東京パートは今回が初の試みであったが、幸いにも様々な方面の方々にネットワークをご紹介いただき、錚々たる企業の方々とのMeet Upが実現した。
3都市目となる東京についた頃には、チームビルィングもしっかりとできており、各人がそれぞれのバックグラウンドと持ち味でチームをリードし、また企業訪問時の質問の純度も上がっていった。
業界全体のランドスケープをしっかりと掴みつつある頃合いであり、各プレイヤーがどのような事業形態をとっているのか、強みや弱みなども含めて一応の理解がついてきたからこそ、企業訪問の意味合いも一層高まっていた。
東京は訪問者にとっては開発し尽くされている印象だそうで、また三井不動産や三菱地所、森ビルといったデベロッパーの事業規模は、世界にも類をみないものである。
特に森ビルのプレゼンテーションは圧巻の一言で、そして開発手法からエリアマネジメントに至るまで、考えつくされた長期的ビジョンに基づく開発には一同感心をしていた。また中国出身者には上海環球中心(Shanghai World Financial Center)を森ビルがリスクを取りながらも創り上げたことで、知るものも多かった。
Goldman Sachs(AM、ASSG、Realty)やMorgan Stanley Capital KK(MSREFFで有名)、Angelo GordonといったいわゆるReal Estate Private Equity(REPE)はManaging Directorの方々から直々にプレゼンテーションもいただき、非常に有益な時間となった。各会社ごとに全くことなるカルチャーが面白い。
これは各企業のファンドが取るリスクとリターン、得意とする投資スタイルの違いによるものだ。
いわゆる外資系不動産ファンドは、業界も狭いため、様々な人材の流れ方や裏話も聞けた。
GSはASSG(Asia Special Situation Group)とAM(Asset Managemtn)/Realtyでは、そもそも投資資金の拠出元が異なるため、投資スタンスが異なる。
ASSGはGSの内部資金を使っているため、リターンが出るものであれば、さまざまなものに独自で判断をし、積極的に投資をする。Distressから、星野リゾートとの合弁事業など有名なものから、太陽光など様々。口外できない内容が多いとのこと。
AM/RealtyはLimited Partnerから資金を募ってファンドを構成するいわゆるPrivate Equity。最近有名なものはMoxy Hotel TokyoとKyotoへの投資だろうか。また、こちらでも太陽光はほぼ1/3のAsset Under Managementを占めるという。その他はClass Aオフィスなど、コアからコアプラスのいわゆるミドルリスク・ミドルリターンの投資が主流。
Morgan Stanley Capital KKはいわゆるMSREFFとしてリーマン・ショック前にかなりの隆盛を極めた、ハイリスク・ハイリターン型のOpportunisticファンドの代表例であり、その頃はSWFCや日本中のANAインターコンチネンタルへの投資を手がけていた。
現在もリーマン・ショックからの痛手を埋めつつV字回復し、業界をリードしている。近年ではPrime Asiaと呼ばれる長期ミドルリターン型のコアファンドも設立している。
MSREFF卒業生には他のファンドで活躍する人も多数いる。Green OakやGSのASSG、Blackstone Japanなどさまざまだ。情報とネットワークが命のREPEでは非常に強みがある。
ユニークなのは、香港Partで初めて知ったAngelo GordonというPrivate Equityで、GSやMorgan Stanleyと同じく米国発祥。もともとはDistress投資に強みがり、Distressの担保として不動産を獲得してゆくうちに急成長をしたファンドだ。
特にAdd Value投資が得意で、香港での事例や東京の近年のトラックレコードを実際に見せてもらい、知っているビルが結構あった。
オフィスからホテルへのコンバージョンを行ったり、歴史的建造物と融合させた商業施設を開発したりと、建築側からの発想によりAdd Valueをし、運用してゆくのが面白い。チームも少数精鋭で、ディレクターの言葉を借りれば、彼らのビジネスはPeople Businessであり、自分のディールはAcqisitionからUnderwriting、設計者選定やアセットマネジメント、そしてDispositionまで全て面倒をみるため、彼らからするとMy Baby Projectなのである。
日本では、Plantec AssociatesやGensler、日建設計や竹中工務店といったデザイン性と経済合理性を両立する建築事務所との協働が多く、またテナントもLVMHを入れたりと面白い。近年では青山ベルコモンズの再開発を取りまとめたことでも知られる。
また、数少ないGround Up Project、いわゆる開発案件も手がけるPEのうちの一つだ。東京代表はHarvard Collage出身者でありながら、京都大学院で建築を学んでいたというバックグラウンド。
Mixerは我が家での手巻き寿司パーティや、築地訪問、そして友人のレストラン(フレンチ焼き鳥)で舌鼓、もちろんカラオケなど、とにかく日本の食文化の豊かさに浸ってもらった。
このTrekがきっかけとなり、結果的にMorgan Stanley Capital KK、Angelo Gordon Tokyo、Phoenix Property Investors Japanからサマー・インターンのオファーをいただくことになったが、次回では応募やインタビュー、そのインターン内容について触れたいと思う。
2018年5月19日土曜日
2017 Fall Semester, 3rd Semester 授業紹介
そろそろ留学生活も大詰めを迎えているので、振り返りながら、学びや気付きをまとめておきたい。
まずは2017, Fall Semester(3nd Semester)で僕が取っていた授業を紹介しつつ、そのフィードバック等をまとめておく。
3rd Semesterは最終論文でもありプロジェクトでもあるOpen Projectが始まる時期なので、GSD,HBS,HKSでの今までの学びやサマーインターンでのスキル習得を活かして、Open Projectの構想を練り上げることを行いつつ、Field Studyを中心とした。シアトル、ボストンでのFirst Handな経験をもとに米国基準での都市計画、不動産開発、設計、施行についても具体的に知見を広げた。
具体的に取った授業は下記。
具体的に取った授業は下記。
1) Field Studies in Real Estate, Urban Planning, and Urban Design, case in Seattle by Richard Peiser
一学期の不動産ファイナンスに続き、名物教授であるRick Peiserが主導するField Study型の授業。この授業は不動産デザイン学科の中でものめり込める非常にお気に入りの授業のひとつ。
毎年、Rickのパワフルな人脈により、様々な都市をフィールド・スタディの場所として選定し、その都市の都市計画局や地元デベロッパー、建築家、不動産アナリストそして市民団体をアドバイザーに迎えて、最終的に選定都市への開発提案を行う。
Field Studyクラスの学生構成はコンパクトかつ精鋭を揃えてのクラス構成となる。
不動産デザイン学科の学生はもちろん、Urban Planning学科、Urban Design学科、そしてMark、つまり建築学科からの学生からの混成チームが結成される。
各回に、開発計画を提案するにあたり、不動産ファイナンス側だったり都市計画論側からの短い課題が出される。
そして、学期中期に目玉である選定都市訪問、そしてField Studyと地元ステークホルダーとの対話が行われる。もちろん学期末には提案書を練り上げ、最終プレゼンを地元ステークホルダーと教授陣を前に行う。
昨年のField Study地はマイアミだったため、応募者殺到のうえ、くじ引きによる抽選となったが、今年もAmazon本社やFacebook、Google、ボーイングが本社を構えてテック系雇用の震源地となりつつあるシアトル。
なんとか抽選に繰り上がり合格し、実地調査ができることになった。
最終プレゼンを行った、我らがTeam Gooseの案(都市計画系と不動産系の学生5人の米国、インド、モナコ、日本からなる混成チーム)
操車場とアーミー用地が残るInterbayというシアトル市街北部のエリアにPromenadeを軸とした様々な活動がCrossする「場」を提案。
クラス内とシアトル側の審査委員から見事一位に選ばれた。
シアトルは現在、Amazon社が本社を構えて、その規模をさまざまな企業買収とともに急拡大している。現在シアトルでの社員はなんと4万人!
まさにAmazon Villageが出来上がっており、地元にとってもAmazonの雇用がもつインパクトが凄まじい。
画面の黄色いハイライトがAmazonによる開発。
ほぼ市街地の大規模開発の70%はアマゾンによるものだ。
また、その他にも青ハイライトはFacebook、赤ハイライトはGoogleの施設群をしめす。
また、InterbayエリアにはExpedia本社も新設予定。
このField StudyではAmazon本社の開発、設計を手掛けたNBBJの設計部長から直々に案内を承けた。また、実際にはAmazon自体も不動産開発を行っているため、GSD出身者を多数採用している。
また、現地シアトルのワシントン・ユニバーシティでも教鞭をとりULIのコアメンバーであり都市計画家のPike氏を始めとして、不動産アナリスト、市民団体、アーキテクトデベロッパーの方々が勢揃いしてのシアトルの都市計画と市況についての濃密なレクチャーシリーズとディスカッションが行われる。
もちろん濃密なField Tourの合間にも、シアトルの建築群を巡る。
特にOMAによるSeattle Public Libraryは必見。多様につながる空間と、独特の外皮により居場所がいくらでも選べる。少し小高い丘の高層ビル群の切れ目に位置するのだが、視認性が高いわりに都市に公共空間を内外に与えている。
また、スターバックスの創業者ハワード・シュルツがレイ・オールデンバーグからヒントを得て作ったとされるサードプレイスの発祥地、つまりスタバ一号店は是非とも訪れてみたい場所だったので、念願が叶った。
Field Studyの中ではSeattleの市街地の他に、Bellevueも廻った。シアトル市街地からおよそ車で20分程度の対岸に位置するこの街、なんとほぼ街区すべてがKemperというデベロッパーによって40年にわたって開発されて来ており、今はハイエンドな商業とオフィス、高層住宅からなる地域となっている。
下記は実際に40年間のBellevueの発展を手がけてきたKemper会長その人。自ら模型を示しながら、そして施設を歩き回りながら発せられる言葉には熱が入っていた。日本でいう森稔さんのような方だ。
印象的だったのは、昨今にAmazonなどのE commerce台頭により商業施設の必要性を危ぶむ声がある中で、それでもやはり商業がカタリストとして街には必要だという信念。彼の開発の中心には常によく考案された駐車場つきの大規模商業がある。
また、テナントやワーカーともコーヒー片手に気さくに話しかけて、足で稼ぐ姿は大いに見習うものがある。
ますますテック系人材が流入し、そして自然にも恵まれたシアトル・メトロエリアは今後も発展する見込みが高く、オフィス系不動産開発が今後も期待される。同時に交通やアメニティなどのインフラがまだまだ未整備でもあるため、様々なプロジェクトが目白押しだ。
これらのField Studyを経て、米国の各都市における固有性や開発機会の底力を感じた。では日本では西と東、あるいは北と南ではこのように力強く、個性を保ちながら発展を遂げている都市があるだろうか?住み分けとも取れるこのような米国各都市の傾向からヒントを得た。
このField Trip後に約3週間をかけて、各学科からの学生の持ち味を活かしつつ、シアトル市インターベイエリアを統括する市政府局へのレポートとプレゼンを練り上げる。
Field Tripを終えたチームは一丸となって、各々の専門性を活かしつつ、いい案を練り上げた。我々のチームは操車場を撤去し、プロムナードを導入しつつ、ウォーターフロントと内陸地を分断するマグノリアブリッジを付け替えるという案を示した。
もちろん、Land Developer / Building Developerとしての事業性も担保しつつだ。
日本では大阪や、中国地方各都市(岡山、広島)、福岡といった西側の地域に非常に有効な開発と成りうるだろう。
レポートには他のチームからの素晴らしい提案も含まれているため、時期をみて、また公開したい。
Field Tripも含まれたいわゆるGSD名物のスタジオスタイルに近い授業であったため、非常に長くなってしまったが、求められる貢献度とプロダクションの物量が多いため、覚悟を持って望む必要がある。だが、もちろん得られるFirst Hand ExperienceとNetwork、Knowledge、として戦友との絆は計り知れない。
気づきとしては下記
・米国の各都市はそれぞれ、不動産開発の求心力が異な、独自の発展を遂げている
・企業誘致の重要性と相乗効果のあるアトラクション
・美味いもの、うまいクラフトビールがある都市には人が集まる
・ワシントンUとの連携によりテック系の優秀な人材と企業誘致のマッチング
・都市計画系の人材との連携は視点を増やせる。特に米国ベースの学生
・Rickとは僕の東京、スリランカでの仕事の話も通じて、生涯の関係が構築できた
以上
2) Global Leadership in Real Estate and Design by Eugene Kohn and Bing Wang
こちらもField Studyにつづき、スタジオスタイルに近いプロジェクトベースの人気授業。泣く子も黙るKPFの創業者の一人でもあり、現役のEugene Kohn氏に直接師事する機会を得られる貴重な授業。
Bing Wang教授は不動産ファイナンスの側面から学生を促してゆき、もちろんGeneは得意の複合開発から実績をもとに示唆を与えてゆく。
レクチャー形式は一学期のForm and Financeに似てはいるものの、クラスは実際のトリップと敷地調査を得て、実際にデベロッパーがKPFと開発する敷地に他の解を出すというもの。
2つの対象敷地があり、1つはバルセロナでBingによる指導、そしてもう一つはボストン・シーポートエリアでのKPFデザインによる開発地区であり、もちろんGeneとKPFのチーフアーキテクトによる指導。
Shanghai World Financial Centerや六本木ヒルズ、NYハドソンヤードプロジェクトでの具体的なエピソードやでデベロッパーとのやり取りなど、興味が尽きないが、彼の直截でありながらユーモアたっぷりな話っぷりにどんどん引き込まれてゆく。
そしてKPF創業期の話を語ってくれた。Gene自体はデベロッパーとの協働や組織のリードが非常に上手い人物であり、デザインでは圧倒的にPedersonが上手いと自身も認めているようだ。
面白いのが、六本木ヒルズの最上階に美術館を置くアイデアに当初は反対していたという事実。結果は明らかだ
この距離で自身のスケッチをもとに、的確なアドバイスをくれる。
最高の時間だ。
Gene、KPFからのフィードバックは下記。
・スタートは出来るかぎりシンプルに考える。とくに複合開発を考える上では用途を交錯する導線に注意
・アメニティと公共空間は重要、ただし事業性を阻害しない範囲で
・六本木ヒルズの自身の体験をプレゼンしたが、好評をいただいた。
もちろん不動産事業性を担保するためのProformaを同時に検証しつつ、ミクストユースを計画してゆくのだが、変数が多いために、最終的な案にたどり着くためには、チーム内のかなりの議論と迷わないVisionを必要とする。
今回のチームは不動産デザイン学科の一年生と二年生、そしてランドスケープ学科の学生による。
現地をKPFのチーフアーキテクトと施工会社が案内してくれる。ゼネコン出身者としては血が騒ぐ笑
下記は成果物の一部。
最終プレゼンでは各チームからのデザイン的質の高い成果物が相次ぐ。これぞGSDだろう。このクラスは数年に一度のペースでBing Wang教授が書籍として取りまとめて出版もしている。今回は書籍には含まれないかもしれないが、様々な気づきがあった。
・複合開発という変数やステークホルダーが多い開発形式ではVISIONに常に立ち返ること
・多様なパブリックスペースの創出
・Value Mappingというテナント、コンド価格の尺度づけ手法
・数字はあくまで開発の下支えにすぎず、やはり最後はコンセプトとプロダクション
・チーム各自のスキルセットやバックグラウンドの多様性は大切
以上
3) Innovation in Project Delivery by Mark Johnson
この授業では、米国基準による建設プロジェクトの発注方法と、昨今この業界で起こっているDisruptiveなプレイヤーの同行を置いながら、いかに建設プロセスを刷新できるかに調整する。
実は隠れた名授業であり、僕自身としては日本のゼネコンの方式に慣れきってしまっているため、米国基準、国際基準での発注方式の基礎を身につけることに大いに役立った。
実際、Markは様々な建設コンサルを経験し、さらにHarvard大学のCaptal Managementをリードしていた筋金入りのコンストラクション・マネージャー。Capital Managerとは大学の保有する建物をどう改修し、あるいはキャンパスを広げてゆくかを大学の資金をつかってマネジメントを行う。
近作には、ハーバードのファインアーツ・ミュージアムがある。
旧美術館とコルビジェによるアートセンターを融合しつつ、増築した建物で、Markに雇われた建築家はレンゾ・ピアノ。
施行を担当したゼネコンの担当者がMarkの招きにより、レクチャーを行ってくれた。
Markからクラスの前半では、各発注方式についての基礎的なレクチャーが行われる。すなわち、各方式のプロコンを中心に、どの手法がどの不動産開発事業に向いているか、などについて解き明かす。
4つのオーソドックスな発注方式は下記
・Design Bid Build
・Construction Management at Risk
・Design Build
・Integrated Project Delivery
それに加えて、昨今話題のモジュール方式や3Dプリンターを使った方式、いわゆるDisruptorによる話題にも中盤では触れる。
ゲストスピーカーで特に自身の活動の延長線上にあるロールモデルといえる、DDGグループ創業者のPeterのプレゼンは掻き立てられるものがある。いわゆるアーキテクト・デベロッパーでありNYではFiancial Crisis後に創業し、今や超高層の開発に着手するまでに成長している不動産開発+デザインを行うグループでありNYを中心に活動している。
彼らのデザイン的手法としてはNYの既存ビルの素材感や装飾をトレースしつつ、その表現方法をモディファイする。
たとえ新しい開発であったとしても開口部の面積は既存のアールデコ調建物と合わせているため、タウンスケープに馴染みやすい。
アーキテクト・デベロッパーという職種があることをA+Uなどでも取り上げてよいと思う。
授業後半では、これらのインプットを元に、自身により建設方法や発注方式、あるいは周辺のサービスについてのイノベーションを考案する。最終成果物としてはビジネスプラン含む論文にまとめるというものである。
自身は建設産業での人手不足を解消しつつ、職人のモチベーションやスキルアップを促すアプリケーションサービスを考案した。
Uberにヒントを得た。つまり建設プロジェクトにおけるWork Forceや下請け業者の最適配置とマッチングサービスだ。こちらはDistinctionという評価を得られた。
実際に日本に限らず、今後新興するアジアの都市において労働市場の最適化においては必要なツールであろう。実現させるにはいろいろなリソースが必要ではあるが、近い将来に実現させたいプロジェクトのひとつとなった。
ある意味ではスマホでつながったゼネコンをつくるようなものだ。
ぶっちゃけ、Markは将来の自身の開発プロジェクトで是非、力になって欲しい笑
不動産デザイン学科のみならずGSDにおいて建設の方式全容を知るうえでは、必修にしてもいいくらいおすすめの授業。
気づきは下記
・米国基準の4方式の習得は必須
・Disruptorの活用がどれだけ進むか、この5年ほどで見えてきそう
・小規模プロジェクトにおいてもコンサルの活用やリスクコントロールを厳格に行うべき
・労働市場は人口動態と完全に連携しているため、今後の全世界的規模の都市化では課題
・MarkにCMを担当してほしい
以上。
4) Open Project 1
不動産デザイン学科での学びの集大成ともいえるプロジェクト型Thesisだ。こちらは最終学期に取りまとめるための、準備体操やインプット期間のようなものなので、あらためて最終学期の成果とともに記事にしたい。
下記に最終的に決定したタイトルとカバーページを記載する。
今回は以上!
一学期の不動産ファイナンスに続き、名物教授であるRick Peiserが主導するField Study型の授業。この授業は不動産デザイン学科の中でものめり込める非常にお気に入りの授業のひとつ。
毎年、Rickのパワフルな人脈により、様々な都市をフィールド・スタディの場所として選定し、その都市の都市計画局や地元デベロッパー、建築家、不動産アナリストそして市民団体をアドバイザーに迎えて、最終的に選定都市への開発提案を行う。
Field Studyクラスの学生構成はコンパクトかつ精鋭を揃えてのクラス構成となる。
不動産デザイン学科の学生はもちろん、Urban Planning学科、Urban Design学科、そしてMark、つまり建築学科からの学生からの混成チームが結成される。
各回に、開発計画を提案するにあたり、不動産ファイナンス側だったり都市計画論側からの短い課題が出される。
そして、学期中期に目玉である選定都市訪問、そしてField Studyと地元ステークホルダーとの対話が行われる。もちろん学期末には提案書を練り上げ、最終プレゼンを地元ステークホルダーと教授陣を前に行う。
昨年のField Study地はマイアミだったため、応募者殺到のうえ、くじ引きによる抽選となったが、今年もAmazon本社やFacebook、Google、ボーイングが本社を構えてテック系雇用の震源地となりつつあるシアトル。
なんとか抽選に繰り上がり合格し、実地調査ができることになった。
シアトル市街地をGas Works Parkから望む。以前はガス生成所があった場所を都市公園へと再生 |
最終プレゼンを行った、我らがTeam Gooseの案(都市計画系と不動産系の学生5人の米国、インド、モナコ、日本からなる混成チーム)
操車場とアーミー用地が残るInterbayというシアトル市街北部のエリアにPromenadeを軸とした様々な活動がCrossする「場」を提案。
クラス内とシアトル側の審査委員から見事一位に選ばれた。
シアトルは現在、Amazon社が本社を構えて、その規模をさまざまな企業買収とともに急拡大している。現在シアトルでの社員はなんと4万人!
まさにAmazon Villageが出来上がっており、地元にとってもAmazonの雇用がもつインパクトが凄まじい。
画面の黄色いハイライトがAmazonによる開発。
ほぼ市街地の大規模開発の70%はアマゾンによるものだ。
また、その他にも青ハイライトはFacebook、赤ハイライトはGoogleの施設群をしめす。
また、InterbayエリアにはExpedia本社も新設予定。
このField StudyではAmazon本社の開発、設計を手掛けたNBBJの設計部長から直々に案内を承けた。また、実際にはAmazon自体も不動産開発を行っているため、GSD出身者を多数採用している。
また、現地シアトルのワシントン・ユニバーシティでも教鞭をとりULIのコアメンバーであり都市計画家のPike氏を始めとして、不動産アナリスト、市民団体、アーキテクトデベロッパーの方々が勢揃いしてのシアトルの都市計画と市況についての濃密なレクチャーシリーズとディスカッションが行われる。
もちろん濃密なField Tourの合間にも、シアトルの建築群を巡る。
特にOMAによるSeattle Public Libraryは必見。多様につながる空間と、独特の外皮により居場所がいくらでも選べる。少し小高い丘の高層ビル群の切れ目に位置するのだが、視認性が高いわりに都市に公共空間を内外に与えている。
また、スターバックスの創業者ハワード・シュルツがレイ・オールデンバーグからヒントを得て作ったとされるサードプレイスの発祥地、つまりスタバ一号店は是非とも訪れてみたい場所だったので、念願が叶った。
Field Studyの中ではSeattleの市街地の他に、Bellevueも廻った。シアトル市街地からおよそ車で20分程度の対岸に位置するこの街、なんとほぼ街区すべてがKemperというデベロッパーによって40年にわたって開発されて来ており、今はハイエンドな商業とオフィス、高層住宅からなる地域となっている。
下記は実際に40年間のBellevueの発展を手がけてきたKemper会長その人。自ら模型を示しながら、そして施設を歩き回りながら発せられる言葉には熱が入っていた。日本でいう森稔さんのような方だ。
印象的だったのは、昨今にAmazonなどのE commerce台頭により商業施設の必要性を危ぶむ声がある中で、それでもやはり商業がカタリストとして街には必要だという信念。彼の開発の中心には常によく考案された駐車場つきの大規模商業がある。
また、テナントやワーカーともコーヒー片手に気さくに話しかけて、足で稼ぐ姿は大いに見習うものがある。
ますますテック系人材が流入し、そして自然にも恵まれたシアトル・メトロエリアは今後も発展する見込みが高く、オフィス系不動産開発が今後も期待される。同時に交通やアメニティなどのインフラがまだまだ未整備でもあるため、様々なプロジェクトが目白押しだ。
これらのField Studyを経て、米国の各都市における固有性や開発機会の底力を感じた。では日本では西と東、あるいは北と南ではこのように力強く、個性を保ちながら発展を遂げている都市があるだろうか?住み分けとも取れるこのような米国各都市の傾向からヒントを得た。
このField Trip後に約3週間をかけて、各学科からの学生の持ち味を活かしつつ、シアトル市インターベイエリアを統括する市政府局へのレポートとプレゼンを練り上げる。
Field Tripを終えたチームは一丸となって、各々の専門性を活かしつつ、いい案を練り上げた。我々のチームは操車場を撤去し、プロムナードを導入しつつ、ウォーターフロントと内陸地を分断するマグノリアブリッジを付け替えるという案を示した。
もちろん、Land Developer / Building Developerとしての事業性も担保しつつだ。
日本では大阪や、中国地方各都市(岡山、広島)、福岡といった西側の地域に非常に有効な開発と成りうるだろう。
レポートには他のチームからの素晴らしい提案も含まれているため、時期をみて、また公開したい。
Field Tripも含まれたいわゆるGSD名物のスタジオスタイルに近い授業であったため、非常に長くなってしまったが、求められる貢献度とプロダクションの物量が多いため、覚悟を持って望む必要がある。だが、もちろん得られるFirst Hand ExperienceとNetwork、Knowledge、として戦友との絆は計り知れない。
気づきとしては下記
・米国の各都市はそれぞれ、不動産開発の求心力が異な、独自の発展を遂げている
・企業誘致の重要性と相乗効果のあるアトラクション
・美味いもの、うまいクラフトビールがある都市には人が集まる
・ワシントンUとの連携によりテック系の優秀な人材と企業誘致のマッチング
・都市計画系の人材との連携は視点を増やせる。特に米国ベースの学生
・Rickとは僕の東京、スリランカでの仕事の話も通じて、生涯の関係が構築できた
以上
2) Global Leadership in Real Estate and Design by Eugene Kohn and Bing Wang
こちらもField Studyにつづき、スタジオスタイルに近いプロジェクトベースの人気授業。泣く子も黙るKPFの創業者の一人でもあり、現役のEugene Kohn氏に直接師事する機会を得られる貴重な授業。
Bing Wang教授は不動産ファイナンスの側面から学生を促してゆき、もちろんGeneは得意の複合開発から実績をもとに示唆を与えてゆく。
レクチャー形式は一学期のForm and Financeに似てはいるものの、クラスは実際のトリップと敷地調査を得て、実際にデベロッパーがKPFと開発する敷地に他の解を出すというもの。
2つの対象敷地があり、1つはバルセロナでBingによる指導、そしてもう一つはボストン・シーポートエリアでのKPFデザインによる開発地区であり、もちろんGeneとKPFのチーフアーキテクトによる指導。
Shanghai World Financial Centerや六本木ヒルズ、NYハドソンヤードプロジェクトでの具体的なエピソードやでデベロッパーとのやり取りなど、興味が尽きないが、彼の直截でありながらユーモアたっぷりな話っぷりにどんどん引き込まれてゆく。
そしてKPF創業期の話を語ってくれた。Gene自体はデベロッパーとの協働や組織のリードが非常に上手い人物であり、デザインでは圧倒的にPedersonが上手いと自身も認めているようだ。
面白いのが、六本木ヒルズの最上階に美術館を置くアイデアに当初は反対していたという事実。結果は明らかだ
この距離で自身のスケッチをもとに、的確なアドバイスをくれる。
最高の時間だ。
Gene、KPFからのフィードバックは下記。
・スタートは出来るかぎりシンプルに考える。とくに複合開発を考える上では用途を交錯する導線に注意
・アメニティと公共空間は重要、ただし事業性を阻害しない範囲で
・六本木ヒルズの自身の体験をプレゼンしたが、好評をいただいた。
もちろん不動産事業性を担保するためのProformaを同時に検証しつつ、ミクストユースを計画してゆくのだが、変数が多いために、最終的な案にたどり着くためには、チーム内のかなりの議論と迷わないVisionを必要とする。
今回のチームは不動産デザイン学科の一年生と二年生、そしてランドスケープ学科の学生による。
現地をKPFのチーフアーキテクトと施工会社が案内してくれる。ゼネコン出身者としては血が騒ぐ笑
下記は成果物の一部。
最終プレゼンでは各チームからのデザイン的質の高い成果物が相次ぐ。これぞGSDだろう。このクラスは数年に一度のペースでBing Wang教授が書籍として取りまとめて出版もしている。今回は書籍には含まれないかもしれないが、様々な気づきがあった。
・複合開発という変数やステークホルダーが多い開発形式ではVISIONに常に立ち返ること
・多様なパブリックスペースの創出
・Value Mappingというテナント、コンド価格の尺度づけ手法
・数字はあくまで開発の下支えにすぎず、やはり最後はコンセプトとプロダクション
・チーム各自のスキルセットやバックグラウンドの多様性は大切
以上
3) Innovation in Project Delivery by Mark Johnson
この授業では、米国基準による建設プロジェクトの発注方法と、昨今この業界で起こっているDisruptiveなプレイヤーの同行を置いながら、いかに建設プロセスを刷新できるかに調整する。
実は隠れた名授業であり、僕自身としては日本のゼネコンの方式に慣れきってしまっているため、米国基準、国際基準での発注方式の基礎を身につけることに大いに役立った。
実際、Markは様々な建設コンサルを経験し、さらにHarvard大学のCaptal Managementをリードしていた筋金入りのコンストラクション・マネージャー。Capital Managerとは大学の保有する建物をどう改修し、あるいはキャンパスを広げてゆくかを大学の資金をつかってマネジメントを行う。
近作には、ハーバードのファインアーツ・ミュージアムがある。
旧美術館とコルビジェによるアートセンターを融合しつつ、増築した建物で、Markに雇われた建築家はレンゾ・ピアノ。
施行を担当したゼネコンの担当者がMarkの招きにより、レクチャーを行ってくれた。
Markからクラスの前半では、各発注方式についての基礎的なレクチャーが行われる。すなわち、各方式のプロコンを中心に、どの手法がどの不動産開発事業に向いているか、などについて解き明かす。
4つのオーソドックスな発注方式は下記
・Design Bid Build
・Construction Management at Risk
・Design Build
・Integrated Project Delivery
それに加えて、昨今話題のモジュール方式や3Dプリンターを使った方式、いわゆるDisruptorによる話題にも中盤では触れる。
ゲストスピーカーで特に自身の活動の延長線上にあるロールモデルといえる、DDGグループ創業者のPeterのプレゼンは掻き立てられるものがある。いわゆるアーキテクト・デベロッパーでありNYではFiancial Crisis後に創業し、今や超高層の開発に着手するまでに成長している不動産開発+デザインを行うグループでありNYを中心に活動している。
彼らのデザイン的手法としてはNYの既存ビルの素材感や装飾をトレースしつつ、その表現方法をモディファイする。
たとえ新しい開発であったとしても開口部の面積は既存のアールデコ調建物と合わせているため、タウンスケープに馴染みやすい。
アーキテクト・デベロッパーという職種があることをA+Uなどでも取り上げてよいと思う。
授業後半では、これらのインプットを元に、自身により建設方法や発注方式、あるいは周辺のサービスについてのイノベーションを考案する。最終成果物としてはビジネスプラン含む論文にまとめるというものである。
自身は建設産業での人手不足を解消しつつ、職人のモチベーションやスキルアップを促すアプリケーションサービスを考案した。
Uberにヒントを得た。つまり建設プロジェクトにおけるWork Forceや下請け業者の最適配置とマッチングサービスだ。こちらはDistinctionという評価を得られた。
実際に日本に限らず、今後新興するアジアの都市において労働市場の最適化においては必要なツールであろう。実現させるにはいろいろなリソースが必要ではあるが、近い将来に実現させたいプロジェクトのひとつとなった。
ある意味ではスマホでつながったゼネコンをつくるようなものだ。
ぶっちゃけ、Markは将来の自身の開発プロジェクトで是非、力になって欲しい笑
不動産デザイン学科のみならずGSDにおいて建設の方式全容を知るうえでは、必修にしてもいいくらいおすすめの授業。
気づきは下記
・米国基準の4方式の習得は必須
・Disruptorの活用がどれだけ進むか、この5年ほどで見えてきそう
・小規模プロジェクトにおいてもコンサルの活用やリスクコントロールを厳格に行うべき
・労働市場は人口動態と完全に連携しているため、今後の全世界的規模の都市化では課題
・MarkにCMを担当してほしい
以上。
4) Open Project 1
不動産デザイン学科での学びの集大成ともいえるプロジェクト型Thesisだ。こちらは最終学期に取りまとめるための、準備体操やインプット期間のようなものなので、あらためて最終学期の成果とともに記事にしたい。
下記に最終的に決定したタイトルとカバーページを記載する。
今回は以上!
2018年4月19日木曜日
ハーバード合格への道 その2 フルブライト編
今年の合格者も出揃い、ハーバードデザインスクールではオープンハウスがあったりと、大学は出会いと別れの雰囲気に包まれている。
もちろん、Final Weekに向けて卒業を目前にした学生は黙々と研究を続けている。
さて、ハーバードデザインスクールへのapplication tipsを以前に自分なりにまとめたが、今回はそろそろ公募が始まるフルブライト奨学金のapplication tipsについてまとめておきたい。
まずはネットで様々なTipsが落ちているので、先人の知恵と記録を参考にしてもらいつつ、僕なりのTipsを共有できればと思う。
僕自身、1度目のフルブライト候補生時に第一志望からのwaiting listだったため、2度の候補生期間を経ての渡米だった。2回のアプライを行っているので、ある意味ではアプライのベテランとも言えるし、どうしようもなく手のかかる奴とも言える。2度も候補生として可能性を見てくれたフルブライトには感謝してもしきれない。
写真はフルブライト・エンリッチメント・セミナーのヒューストン大会の様子。世界70ヶ国以上から代表となるフルブライターが集まっての共同セミナーと貢献活動。
他の奨学金と併願する方々も多いと思うが、フルブライトプログラムは奨学金を得るという実質的なメリットよりも、さらに大きな権利とフルブライターとしての使命が漏れなくついてくる。是非、挑戦して欲しい。
1)5月末 オンラインアプリケーション
要求されるマテリアルはそれほど強烈なものではなく、かつ聞いたところによると、基準を越えていればほぼ通過とのこと。
TOEFL 80以上
こちらは、現在スコアメイキングを始めたアプリカントも多いと思うので、80を越えてれば一応はパス
エッセイ・研究趣旨
自身の研究や活動を、さらに米国で続ける理由、そして研究計画をまとめる。
流暢な英語でのエッセイというよりは明快さと、地に足のついた実績、情熱が求められる。比較的短くA4一枚程度だったかと思うが、ここで骨子をまとめておくと、年末に向けてのスクールビジットやアプライ、インタビューに向けて、非常に有利。
トップスクールを狙う学生は、このプロセスを経るだけでもスタートダッシュが効くので是非取り組んでみてほしい。
オンラインアプリケーションの結果は6月の中旬頃に発表となる。
2)7月末 書類応募
オンラインアプリケーション通過の知らせを受け取る前から即時動き始めたほうがよいのが、この応募書類準備。
実はかなりの手間と時間がかかるので、タイムラインに注意しつつ、オンラインアプリケーションを送信した直後からの行動開始を推奨!
エッセイ
応募にあたり、エッセイ+研究計画書、合計A4約3枚を英語と日本語で執筆。
オンラインアプリケーション時のものを軸に、さらにブラッシュアップ。具体的な候補大学とプログラム名まで見越しての研究ターゲットが求められるので、各大学のWebサイトなどで下準備を行う。
米国アカデミアを通じて、自分が何をどのように研究し知識獲得し、日本に貢献できるかが重要。特に、候補大学での研究室や教授名がはっきりしている場合は書く。
ここでも、やはりなぜ米国なのか?日本ではダメ?欧州でもできるのでは?という疑問符に明快に応えられるように。
とくにフルブライトはひとつの研究分野に対して、原則1名と決まっているので、漠然と建築デザインと書いてしまうと、おそらく響かない。同様に漠然としたMBAも競争率が激しく厳しい。
僕のテーマなどを具体的に知りたい場合はFulbrightサイトでタイトルを見ていただくか、個人的にコンタクトください。
このエッセイを仕上げたことは僕にとっても自信となったし、面接に向けたスピーキングの基礎ともなった。
レジュメ
エッセイでは伝えきれない、自身のこれまでの実績や、Capabilityを示そう。
一般的な学歴や職歴もある程度納得感が必要だが、それ以外にも、どのようなSocial Impactを行ってきたか、などの内容が響くように思う。レジュメの書式に慣れていない人にとっても自分の歴史を見直すいい機会だろう。
賞歴、課外活動、熱中していることや非営利、ボランティア活動、自分のエッセイストーリーを強化してくれる人物像をクリアに示せれば、強力な武器となる。
推薦状
3通必要なのだが、このタイムラインで推薦状をスムーズに手に入れることが、結構難しいため、早めに動きはじめたほうがよい。
僕の場合は学術関係、仕事関係、そして非営利活動関系からの推薦状とした。こちらも、もちろん自身の各研究や活動の内容を補強してくれる、言い換えれば第三者として証明してくれる方々が望ましい。
TOEFLスコアメイキング
実はオンラインアプリケーションでは80点が足切りだったが、この時点では上記のエッセイに記載した候補大学に入るために最低限必要と思われる足切りラインがチェックされていると思われる。
たとえばビジネス・スクールであれば109点以上、GSDであれば96点以上(実際は104点以上は欲しい)など。
最終的に面接に呼ばれて、候補生としての仮合格を出すことになれば、その候補生が大学に受け入れられることを前提としているため、書類審査時である程度の安心感のあるアプリカントを選ぼうとする力が、もちろん働く。
この時点で点数の下駄を短期間で履かせやすいのは、ReadingとWritingだと思うのでエッセイ等に引き続き、ビシバシ書きまくってほしい。
また、Speakingもコミュニケーションに難がないことを示すためにも20は取っておきたい。なんせ最終ゴールはFulbrighterとしてMutual Understandingに自らリーダーシップを発揮して貢献することなのだから。
Speakingについて難がある人は、是非E4TGのDonaldを訪れてほしい。最低限3ヶ月、汗びっしょりになりながらついてゆけば20点は突破できるだろう。おそらくいろいろな意味で足切りとなる24点も何度かテストに挑戦すれば届くはず。
僕自身、Donaldに非常にお世話になったし、今でもE4TG時に習った根幹は生きている。
GPA
あまり足切りになることはないが、わざわざ卒業大学に出向いて、すべてのデータを引っ張り出し、サインしてもらい封をして、7通送付という手間がかかるため早めに動くべき。
特に大学は夏休み期間と重なっているため、間違っても7月末の応募書類郵送締め切り間際なんかに大学にあわててゆかないこと。5月末にオンラインを出し終わったら、速攻で母校の事務局に問い合わせることを薦める。
その他
もし、自分の研究分野で先輩としてフルブライト生として渡米している、あるいは帰国している方がいたら、エッセイをブラッシュアップし始める際に実際に会ってみる。フルブライターの人となりは大先輩から脈々と受け継がれているので、是非その考え方や人間性から、ヒントを感じ取って欲しい。ノーベル賞受賞者や教授、政財界にも先人たちはいるし、調べると結構でてくるので、自分の分野に近い方々に思い切ってコンタクトをとってみて欲しい。
僕の場合も建築系や都市計画系、そして元区長の方など自分の研究分野の方に貴重なアドバイスをいただくことができたし、本気でフルブライトに応募したいという想いを何度も確認できた。
3)11月末前後 面接
書類審査通過のお知らせと同時に突如通知されるのが、面接の案内。
11月前半から中旬にかけて、書類審査の合否とともにフルブライト本部(溜池山王)に呼ばれての面接の時間が通知される。
これについてのTIPSは、生々しくその日の状況を記載してくれているブログもあるので、参考にしてもらいつつ、自分なりの工夫などを伝えておきたい。
セッティング
フルブライト事務局方4名程度、専門領域の先生方4名程度の合計8名程度が面接室に登場する。質問を行うのは基本的に専門領域の先生方4名。ほぼフルブライター。
もちろん英語のみでの面接。時間は15分から20分程度。
自分の場合は和気藹々とした雰囲気からスタートしたが、すぐに具体的な研究内容の質問や実績の内容となった。
応募大学との相性確認
面接までの間にキャンパスビジットは必ずすべき。そしてアカデミック・アドバイザーとなる教授とも、会えるなら相性を確かめておこう。建築や都市計画などの専門領域であれば、かならずなぜGSDなのか?なぜこのプログラムなのか?と聞かれるので、各大学のプログラムの特徴や大学の雰囲気との相性も語れると強い。
また、面接といいながらも、みんな志をもって海外留学を目指すのだからと、素晴らしいアドバイスをくれたりもする。僕の場合は、営利と非営利型がバランスした研究が得意な大学とそうでない大学があることをアドバイスいただいた。
ハーバードはどちらかというと、「選べる」といったところ。ケネディ政策大学院との共同授業やUrban Planningとの共同授業を選べばPublic Benefitにどう貢献できるかという視点。ビジネス・スクールとの共同授業であれば、もちろん営利的視点で社会にどうインパクトを与えるか。だ。
それを考えれば、ひとつのDegreeではなくDouble Degreeを取ることで、自身の研究コアを達成出来る場合もあるという示唆。たとえばコロンビア大学も候補にしていた僕の場合はGSAPPのReal EstateとUrban PlanningのDouble Degreeの組み合わせなどだ。
なぜアメリカか?
再三聞かれる質問。エッセイでも書いたと思うので、是非具体的な自分のキャンパスビジットでの体験などを元に語ってほしい。自身の体験から語ることが地に足のついた発言やその先の情熱へつながるだろう。
ポートフォリオ
必須ではないけれど、僕の場合は建築系バックグラウンドということもあり、2年目の面接には印刷したポートフォリオを持参し、冒頭に手渡した。実際にその一年で石巻でのコミュニティセンター設計の実績などヴィジュアルに伝わることもあったため、自身のエッセイストーリーに沿っているものであれば、積極的に見せてよいと思う。
英語力、ひととなり
実は発音などはある程度、割り引いて見てくれる。それよりも明確にゆっくりでもよいから伝えたいことを正確に伝えることが重要。
それよりも大切なのがひととなり。
上記にも書いたが、自分の研究分野を通じて、その分野をリードし、各国からくるフルブライターとの相互理解を深めることができるだろう人材を欲している。あたりまえだが、自然な笑顔と静かな情熱を持って、夢を語ってほしい。
面接官は実は自分の研究を支えてくれる、よきメンターでもあり大先輩であり、同志でもあることを忘れずに。
自分の場合は、トリッキーなことを聞かれたとか、圧迫とかがあったというわけではなく、あくまでも専門領域の先生から研究に関する非常に誠実な質問やコミュニケーションがあったし、面接が終わったあとは、いいアドバイスをいただいたりディスカッションができたことへの感謝の念と爽やかさが残った感じ。
逆に自分を大きくも小さくも見せる必要がなく、この半年の思考錯誤を通じて自分の等身大とやってきたことを伝えられたことがよかったと思う。
フルブライターの候補生合格者オリエンテーションにゆけば、一目瞭然なのだが、それぞれの候補生が、各分野でリーダーシップを発揮し、そして人間的にも素晴らしい人ばかりなのだ。そういう意味でも面接前には、その空気を感じることはできないので、フルブライターの先輩方々に直に会って空気感を感じ取っておくことをオススメしたい。
面接の最初と最後には、心からの御礼を述べるべきだし、実際に自然とそうしたくなるはずだ。
以上、3段階でのセレクションが設けられ、そして半年に渡る非常に長いアプリケーションプロセスだが、12月初旬に合否結果が出た暁には、フルブライト候補生という地位が与えられる。
このフルブライト候補生という肩書は、実際に研究機関から受け入れが認められてはじめて正式なフルブライターとして渡米できるという意味だ。
ただ、もちろんフルブライド候補生という肩書は大学へのアプリケーションの際にある程度の効力を発揮するので、レジュメに書くことをお忘れなく。
お世話になったフルブライターの大先輩に大学への推薦状をお願いしてもいいだろう。僕の場合も、今でもメンターである、とある大先輩に一筆お願いした。
一人でも多くの方がフルブライターとして米国での研究を元に、日本のみならず国際社会で活躍して欲しいので、記事以上に必要な情報があれば是非気軽にコンタクトして欲しい。
フルブライトのデメリットと思われている1年のみのサポートや2年の自国滞在義務については、正直言って補って余りあるメリットが今は見えるため、心配しなくてよいと思う。
そういった条件面(支援額、自国貢献義務)でのみ物事を判断するアプリカントは見透かされているようにも思うし、そうではないリーダーたちが世界の相互理解に貢献するのだから。
もちろん、Final Weekに向けて卒業を目前にした学生は黙々と研究を続けている。
さて、ハーバードデザインスクールへのapplication tipsを以前に自分なりにまとめたが、今回はそろそろ公募が始まるフルブライト奨学金のapplication tipsについてまとめておきたい。
まずはネットで様々なTipsが落ちているので、先人の知恵と記録を参考にしてもらいつつ、僕なりのTipsを共有できればと思う。
僕自身、1度目のフルブライト候補生時に第一志望からのwaiting listだったため、2度の候補生期間を経ての渡米だった。2回のアプライを行っているので、ある意味ではアプライのベテランとも言えるし、どうしようもなく手のかかる奴とも言える。2度も候補生として可能性を見てくれたフルブライトには感謝してもしきれない。
写真はフルブライト・エンリッチメント・セミナーのヒューストン大会の様子。世界70ヶ国以上から代表となるフルブライターが集まっての共同セミナーと貢献活動。
他の奨学金と併願する方々も多いと思うが、フルブライトプログラムは奨学金を得るという実質的なメリットよりも、さらに大きな権利とフルブライターとしての使命が漏れなくついてくる。是非、挑戦して欲しい。
ヒューストン、NASA宇宙基地博物館での記念撮影 |
1)5月末 オンラインアプリケーション
要求されるマテリアルはそれほど強烈なものではなく、かつ聞いたところによると、基準を越えていればほぼ通過とのこと。
TOEFL 80以上
こちらは、現在スコアメイキングを始めたアプリカントも多いと思うので、80を越えてれば一応はパス
エッセイ・研究趣旨
自身の研究や活動を、さらに米国で続ける理由、そして研究計画をまとめる。
流暢な英語でのエッセイというよりは明快さと、地に足のついた実績、情熱が求められる。比較的短くA4一枚程度だったかと思うが、ここで骨子をまとめておくと、年末に向けてのスクールビジットやアプライ、インタビューに向けて、非常に有利。
トップスクールを狙う学生は、このプロセスを経るだけでもスタートダッシュが効くので是非取り組んでみてほしい。
オンラインアプリケーションの結果は6月の中旬頃に発表となる。
2)7月末 書類応募
オンラインアプリケーション通過の知らせを受け取る前から即時動き始めたほうがよいのが、この応募書類準備。
実はかなりの手間と時間がかかるので、タイムラインに注意しつつ、オンラインアプリケーションを送信した直後からの行動開始を推奨!
エッセイ
応募にあたり、エッセイ+研究計画書、合計A4約3枚を英語と日本語で執筆。
オンラインアプリケーション時のものを軸に、さらにブラッシュアップ。具体的な候補大学とプログラム名まで見越しての研究ターゲットが求められるので、各大学のWebサイトなどで下準備を行う。
米国アカデミアを通じて、自分が何をどのように研究し知識獲得し、日本に貢献できるかが重要。特に、候補大学での研究室や教授名がはっきりしている場合は書く。
ここでも、やはりなぜ米国なのか?日本ではダメ?欧州でもできるのでは?という疑問符に明快に応えられるように。
とくにフルブライトはひとつの研究分野に対して、原則1名と決まっているので、漠然と建築デザインと書いてしまうと、おそらく響かない。同様に漠然としたMBAも競争率が激しく厳しい。
僕のテーマなどを具体的に知りたい場合はFulbrightサイトでタイトルを見ていただくか、個人的にコンタクトください。
このエッセイを仕上げたことは僕にとっても自信となったし、面接に向けたスピーキングの基礎ともなった。
レジュメ
エッセイでは伝えきれない、自身のこれまでの実績や、Capabilityを示そう。
一般的な学歴や職歴もある程度納得感が必要だが、それ以外にも、どのようなSocial Impactを行ってきたか、などの内容が響くように思う。レジュメの書式に慣れていない人にとっても自分の歴史を見直すいい機会だろう。
賞歴、課外活動、熱中していることや非営利、ボランティア活動、自分のエッセイストーリーを強化してくれる人物像をクリアに示せれば、強力な武器となる。
推薦状
3通必要なのだが、このタイムラインで推薦状をスムーズに手に入れることが、結構難しいため、早めに動きはじめたほうがよい。
僕の場合は学術関係、仕事関係、そして非営利活動関系からの推薦状とした。こちらも、もちろん自身の各研究や活動の内容を補強してくれる、言い換えれば第三者として証明してくれる方々が望ましい。
TOEFLスコアメイキング
実はオンラインアプリケーションでは80点が足切りだったが、この時点では上記のエッセイに記載した候補大学に入るために最低限必要と思われる足切りラインがチェックされていると思われる。
たとえばビジネス・スクールであれば109点以上、GSDであれば96点以上(実際は104点以上は欲しい)など。
最終的に面接に呼ばれて、候補生としての仮合格を出すことになれば、その候補生が大学に受け入れられることを前提としているため、書類審査時である程度の安心感のあるアプリカントを選ぼうとする力が、もちろん働く。
この時点で点数の下駄を短期間で履かせやすいのは、ReadingとWritingだと思うのでエッセイ等に引き続き、ビシバシ書きまくってほしい。
また、Speakingもコミュニケーションに難がないことを示すためにも20は取っておきたい。なんせ最終ゴールはFulbrighterとしてMutual Understandingに自らリーダーシップを発揮して貢献することなのだから。
Speakingについて難がある人は、是非E4TGのDonaldを訪れてほしい。最低限3ヶ月、汗びっしょりになりながらついてゆけば20点は突破できるだろう。おそらくいろいろな意味で足切りとなる24点も何度かテストに挑戦すれば届くはず。
僕自身、Donaldに非常にお世話になったし、今でもE4TG時に習った根幹は生きている。
GPA
あまり足切りになることはないが、わざわざ卒業大学に出向いて、すべてのデータを引っ張り出し、サインしてもらい封をして、7通送付という手間がかかるため早めに動くべき。
特に大学は夏休み期間と重なっているため、間違っても7月末の応募書類郵送締め切り間際なんかに大学にあわててゆかないこと。5月末にオンラインを出し終わったら、速攻で母校の事務局に問い合わせることを薦める。
その他
もし、自分の研究分野で先輩としてフルブライト生として渡米している、あるいは帰国している方がいたら、エッセイをブラッシュアップし始める際に実際に会ってみる。フルブライターの人となりは大先輩から脈々と受け継がれているので、是非その考え方や人間性から、ヒントを感じ取って欲しい。ノーベル賞受賞者や教授、政財界にも先人たちはいるし、調べると結構でてくるので、自分の分野に近い方々に思い切ってコンタクトをとってみて欲しい。
僕の場合も建築系や都市計画系、そして元区長の方など自分の研究分野の方に貴重なアドバイスをいただくことができたし、本気でフルブライトに応募したいという想いを何度も確認できた。
3)11月末前後 面接
書類審査通過のお知らせと同時に突如通知されるのが、面接の案内。
11月前半から中旬にかけて、書類審査の合否とともにフルブライト本部(溜池山王)に呼ばれての面接の時間が通知される。
これについてのTIPSは、生々しくその日の状況を記載してくれているブログもあるので、参考にしてもらいつつ、自分なりの工夫などを伝えておきたい。
セッティング
フルブライト事務局方4名程度、専門領域の先生方4名程度の合計8名程度が面接室に登場する。質問を行うのは基本的に専門領域の先生方4名。ほぼフルブライター。
もちろん英語のみでの面接。時間は15分から20分程度。
自分の場合は和気藹々とした雰囲気からスタートしたが、すぐに具体的な研究内容の質問や実績の内容となった。
応募大学との相性確認
面接までの間にキャンパスビジットは必ずすべき。そしてアカデミック・アドバイザーとなる教授とも、会えるなら相性を確かめておこう。建築や都市計画などの専門領域であれば、かならずなぜGSDなのか?なぜこのプログラムなのか?と聞かれるので、各大学のプログラムの特徴や大学の雰囲気との相性も語れると強い。
また、面接といいながらも、みんな志をもって海外留学を目指すのだからと、素晴らしいアドバイスをくれたりもする。僕の場合は、営利と非営利型がバランスした研究が得意な大学とそうでない大学があることをアドバイスいただいた。
ハーバードはどちらかというと、「選べる」といったところ。ケネディ政策大学院との共同授業やUrban Planningとの共同授業を選べばPublic Benefitにどう貢献できるかという視点。ビジネス・スクールとの共同授業であれば、もちろん営利的視点で社会にどうインパクトを与えるか。だ。
それを考えれば、ひとつのDegreeではなくDouble Degreeを取ることで、自身の研究コアを達成出来る場合もあるという示唆。たとえばコロンビア大学も候補にしていた僕の場合はGSAPPのReal EstateとUrban PlanningのDouble Degreeの組み合わせなどだ。
なぜアメリカか?
再三聞かれる質問。エッセイでも書いたと思うので、是非具体的な自分のキャンパスビジットでの体験などを元に語ってほしい。自身の体験から語ることが地に足のついた発言やその先の情熱へつながるだろう。
ポートフォリオ
必須ではないけれど、僕の場合は建築系バックグラウンドということもあり、2年目の面接には印刷したポートフォリオを持参し、冒頭に手渡した。実際にその一年で石巻でのコミュニティセンター設計の実績などヴィジュアルに伝わることもあったため、自身のエッセイストーリーに沿っているものであれば、積極的に見せてよいと思う。
英語力、ひととなり
実は発音などはある程度、割り引いて見てくれる。それよりも明確にゆっくりでもよいから伝えたいことを正確に伝えることが重要。
それよりも大切なのがひととなり。
上記にも書いたが、自分の研究分野を通じて、その分野をリードし、各国からくるフルブライターとの相互理解を深めることができるだろう人材を欲している。あたりまえだが、自然な笑顔と静かな情熱を持って、夢を語ってほしい。
面接官は実は自分の研究を支えてくれる、よきメンターでもあり大先輩であり、同志でもあることを忘れずに。
自分の場合は、トリッキーなことを聞かれたとか、圧迫とかがあったというわけではなく、あくまでも専門領域の先生から研究に関する非常に誠実な質問やコミュニケーションがあったし、面接が終わったあとは、いいアドバイスをいただいたりディスカッションができたことへの感謝の念と爽やかさが残った感じ。
逆に自分を大きくも小さくも見せる必要がなく、この半年の思考錯誤を通じて自分の等身大とやってきたことを伝えられたことがよかったと思う。
フルブライターの候補生合格者オリエンテーションにゆけば、一目瞭然なのだが、それぞれの候補生が、各分野でリーダーシップを発揮し、そして人間的にも素晴らしい人ばかりなのだ。そういう意味でも面接前には、その空気を感じることはできないので、フルブライターの先輩方々に直に会って空気感を感じ取っておくことをオススメしたい。
面接の最初と最後には、心からの御礼を述べるべきだし、実際に自然とそうしたくなるはずだ。
以上、3段階でのセレクションが設けられ、そして半年に渡る非常に長いアプリケーションプロセスだが、12月初旬に合否結果が出た暁には、フルブライト候補生という地位が与えられる。
このフルブライト候補生という肩書は、実際に研究機関から受け入れが認められてはじめて正式なフルブライターとして渡米できるという意味だ。
ただ、もちろんフルブライド候補生という肩書は大学へのアプリケーションの際にある程度の効力を発揮するので、レジュメに書くことをお忘れなく。
お世話になったフルブライターの大先輩に大学への推薦状をお願いしてもいいだろう。僕の場合も、今でもメンターである、とある大先輩に一筆お願いした。
一人でも多くの方がフルブライターとして米国での研究を元に、日本のみならず国際社会で活躍して欲しいので、記事以上に必要な情報があれば是非気軽にコンタクトして欲しい。
フルブライトのデメリットと思われている1年のみのサポートや2年の自国滞在義務については、正直言って補って余りあるメリットが今は見えるため、心配しなくてよいと思う。
そういった条件面(支援額、自国貢献義務)でのみ物事を判断するアプリカントは見透かされているようにも思うし、そうではないリーダーたちが世界の相互理解に貢献するのだから。
2018年4月7日土曜日
Japan Trek 2018 by Japan GSD
ハーバードの各大学院は近年、研究と実地調査のためのフィールドトレックを日本で開催しているが、我らがJapan GSDも今年になってはじめて開催に漕ぎ着けた。
自身が代表を務めるJapan GSD、いわゆるハーバード・デザイン・スクール日本人会の皆の努力の賜物である。
そして我々を受け入れてくれた企業、教育機関、スポンサーの皆様には心から感謝申し上げます。
来年も次期Japan GSDが引き継いでくれるので、興味のある方は是非ご連絡ください。
ジャパントレックの内容と成果は下記。
1週間のスタディ・ツアーであり、東京オリンピックに向けた施設整備やインフラ整備が進む東京を、各人の始点からスタディ・ツアーと企業訪問を通じて考察する。
訪れた拠点は概ね下記
・浅草
・秋葉原(メイドカフェ、ラジオ会館)
・皇居
・銀座
・代々木体育館
・豊洲エリア+築地
・新宿+都庁
スタディ・ツアーの最後2日間では東京大学にて「ポストオリンピック・パラリンピックに向けた100のソリューションを考える」と題したワークショップを行った。このワークショップで、日本の大学院生と高校生、アドバイザーの教授陣、研究者を交えて、ポスト・オリンピックに向けた約70個ほどの施設活用アイデアを練り上げ、発表。
これらの成果物は現在レポートに纏め中で、最終的には官庁、教育機関、そしてお世話になった企業やスポンサーに提供予定。
Special Thanks:
〇ワークショップ講評&レクチャー:
- 小林博人 教授 (慶應義塾大学)
- 矢口哲也 教授 (早稲田大学)
- 千葉学 教授 (東京大学)
- 小林恵吾 教授 (早稲田大学)
- 高重吉邦 氏 (富士通株式会社)
- 尾澤章浩 氏 (Route H)
〇協賛企業:富士通株式会社、Route H、ベネッセGlobal Learning Center
〇協力大学:慶應義塾大学、東京大学、早稲田大学
〇協力企業:株式会社 竹中工務店、株式会社 日建設計、三井不動産 株式会社、三菱地所 株式会社、森ビル 株式会社+一般財団法人 森記念財団、隈研吾建築都市設計事務所、株式会社アンジェロ・ゴードン・インターナショナル・エルエルシー、ゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパン有限会社、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社、モルガン・スタンレー・キャピタル株式会社
自身が代表を務めるJapan GSD、いわゆるハーバード・デザイン・スクール日本人会の皆の努力の賜物である。
そして我々を受け入れてくれた企業、教育機関、スポンサーの皆様には心から感謝申し上げます。
森ビルの都市模型 施設整備が進む東京を俯瞰することができる |
日建設計でのセッション GSDの大先輩からもレクチャーを受けることができた |
工事中の新国立競技場 |
来年も次期Japan GSDが引き継いでくれるので、興味のある方は是非ご連絡ください。
ジャパントレックの内容と成果は下記。
1週間のスタディ・ツアーであり、東京オリンピックに向けた施設整備やインフラ整備が進む東京を、各人の始点からスタディ・ツアーと企業訪問を通じて考察する。
訪れた拠点は概ね下記
・浅草
・秋葉原(メイドカフェ、ラジオ会館)
・皇居
・銀座
・代々木体育館
・豊洲エリア+築地
・新宿+都庁
スタディ・ツアーの最後2日間では東京大学にて「ポストオリンピック・パラリンピックに向けた100のソリューションを考える」と題したワークショップを行った。このワークショップで、日本の大学院生と高校生、アドバイザーの教授陣、研究者を交えて、ポスト・オリンピックに向けた約70個ほどの施設活用アイデアを練り上げ、発表。
これらの成果物は現在レポートに纏め中で、最終的には官庁、教育機関、そしてお世話になった企業やスポンサーに提供予定。
提案はインスタグラムで #gsdjapantrek2018 と検索して頂ければすべて公開されているので、是非ご一覧いただきたい。
4-5時間で成果物を出すという、かなりタイトなスケジュールだったが、新国立競技場とその周辺地域に関して、ハーバード生ならではの、様々な視点からのアイデアが出た。
都市計画的視点、インフラ、観光的アイデア、不動産的視点、外国人ならではの視点 etc
個人的な感想と後日談的に語っていたことでの気づきを纏めておきたい
・日本のプレゼンスが下がっていることへの危機感?
確かに相対的に下がっていることを感じるが、我々一人一人が伝道者となって、しっかりとリーダーシップを取ってゆけば、どんな人種であろうが着いてきてくれる。それを感じ、そして実践できたのは嬉しかった。
・日本の学生は内向き思考?
日本全体で見ればそうかもしれないが、ワークショップに参加してくれた世代やその関係者からすれば、僕が学生の時よりも遥かに国際化されており、またSNS等のおかげで情報もリーチしやすくなっており、海外での経験に貪欲と感じた。具体的にトレック後に何人かから留学やキャリアの相談もいただいた。
・わかりやすさ命
寿司を習っておいてよかった。とりあえず分かりやすいところから日本の良さを伝えて往く手段を皆が持つべき。同人誌はちょっと過激すぎてウケなかった笑
銀だこのテイクアウトはホームパーテイに最適で、評判もよかった。あと日本のビールは旨いとのこと。
・高校生
特に印象的だったのがRoute Hというベネッセが提供する米国トップ校を目指す塾からの参加高校生たち。国際感覚に優れ、質問力も鋭く、そして純粋。投げかける問題も素朴で核心をついたものが多かった。はっきりいって建築や都市計画に触れるのは大学生からではなく、もっと若い頃からでもよいと思っていたが、彼らを少しでもインスパイアできていれば嬉しい。
・分野横断領域的なことが必要
ハーバード・デザインスクール流の分野横断的思考が日本の建築学科にも必要。
都市、建築、ランドスケープ、不動産だけではなく、公共政策やビジネスといった観点。これからは日本の建築系大学院にもこれらの視点をあたえる、分野横断的な講座が必要不可欠だと思う。我らがJapan GSDのアドバイザーであるMark Mulligan教授が今年から法政大学で教鞭を取るとのことなので、盛り立ててゆきたい。逆に日本の建築学生は建築アイデアについては強いので、そこは誇れる。
4-5時間で成果物を出すという、かなりタイトなスケジュールだったが、新国立競技場とその周辺地域に関して、ハーバード生ならではの、様々な視点からのアイデアが出た。
都市計画的視点、インフラ、観光的アイデア、不動産的視点、外国人ならではの視点 etc
個人的な感想と後日談的に語っていたことでの気づきを纏めておきたい
・日本のプレゼンスが下がっていることへの危機感?
確かに相対的に下がっていることを感じるが、我々一人一人が伝道者となって、しっかりとリーダーシップを取ってゆけば、どんな人種であろうが着いてきてくれる。それを感じ、そして実践できたのは嬉しかった。
・日本の学生は内向き思考?
日本全体で見ればそうかもしれないが、ワークショップに参加してくれた世代やその関係者からすれば、僕が学生の時よりも遥かに国際化されており、またSNS等のおかげで情報もリーチしやすくなっており、海外での経験に貪欲と感じた。具体的にトレック後に何人かから留学やキャリアの相談もいただいた。
・わかりやすさ命
寿司を習っておいてよかった。とりあえず分かりやすいところから日本の良さを伝えて往く手段を皆が持つべき。同人誌はちょっと過激すぎてウケなかった笑
銀だこのテイクアウトはホームパーテイに最適で、評判もよかった。あと日本のビールは旨いとのこと。
・高校生
特に印象的だったのがRoute Hというベネッセが提供する米国トップ校を目指す塾からの参加高校生たち。国際感覚に優れ、質問力も鋭く、そして純粋。投げかける問題も素朴で核心をついたものが多かった。はっきりいって建築や都市計画に触れるのは大学生からではなく、もっと若い頃からでもよいと思っていたが、彼らを少しでもインスパイアできていれば嬉しい。
・分野横断領域的なことが必要
ハーバード・デザインスクール流の分野横断的思考が日本の建築学科にも必要。
都市、建築、ランドスケープ、不動産だけではなく、公共政策やビジネスといった観点。これからは日本の建築系大学院にもこれらの視点をあたえる、分野横断的な講座が必要不可欠だと思う。我らがJapan GSDのアドバイザーであるMark Mulligan教授が今年から法政大学で教鞭を取るとのことなので、盛り立ててゆきたい。逆に日本の建築学生は建築アイデアについては強いので、そこは誇れる。
Special Thanks:
〇ワークショップ講評&レクチャー:
- 小林博人 教授 (慶應義塾大学)
- 矢口哲也 教授 (早稲田大学)
- 千葉学 教授 (東京大学)
- 小林恵吾 教授 (早稲田大学)
- 高重吉邦 氏 (富士通株式会社)
- 尾澤章浩 氏 (Route H)
〇協賛企業:富士通株式会社、Route H、ベネッセGlobal Learning Center
〇協力大学:慶應義塾大学、東京大学、早稲田大学
〇協力企業:株式会社 竹中工務店、株式会社 日建設計、三井不動産 株式会社、三菱地所 株式会社、森ビル 株式会社+一般財団法人 森記念財団、隈研吾建築都市設計事務所、株式会社アンジェロ・ゴードン・インターナショナル・エルエルシー、ゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパン有限会社、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社、モルガン・スタンレー・キャピタル株式会社
2018年3月26日月曜日
ハーバード不動産デザイン学科におけるキャリアについて
無事に3セメスターやらJapan Trekが終わり、最後のセメスターに取り組むまでブログ更新が滞っていました。すみません。
このブログを読んでくださって、何人かの方々からも問い合わせをいただいたので、まずは留学におけるキャリアについて、僕のケースとクラスメートなどのことをまとめておきたい。(個人の回想的になっているので、将来は削除するかもしれません。あしからず)
自身のキャリアについて
僕のバックグラウンドは純粋な建築設計で、出身地である高知で叔父が家業としてアトリエ系の事務所をしている。もちろん自宅も叔父が設計したので、ごくごく自然な流れで建築家を目指すようになった。
艸建築工房(ソウケンチクコウボウと読みます)
http://www.sou-af.jp/
早稲田大学の建築学科、大学院(石山修武研究室)へと進み、意匠系の道を歩みながらも、やはり家業として設計業の良し悪しも感じながらの進学であったため、自身で建築を通じた社会的インパクトと持続可能な業について、悶々と悩み試行錯誤を学外では繰り返していた。
ひとつの出逢いは、大学の先輩である佐藤オオキさんが立ち上げたデザインオフィスnendo。
http://www.nendo.jp/
nendoの黎明期に目白の小さな事務所で奮闘するオオキさんやその仲間からデザインビジネスについて、First Handな経験を得るとともに、自身もデザインビジネスが好きであることに気付いた瞬間だった。
そして「10年後にしたいことが今あるなら、迷わず今行動することの大切さを思い知った、もちろん日本で出来なければ、日本を出てもいい」ことを。
その後、自身のデザイン事務所を興して、名刺一枚のデザインからブランディング、CIを行ったり、建築やプロダクトのデザインを行うなどデザインビジネスの試行錯誤をくりかえしていた。
転換期だったのはスリランカでのリゾートホテルの設計。
スリランカでの不動産開発を行う日本人に連れられて、たまたま叔父と親交があった建築家Geoffrey Bawa氏とのご縁も手伝って、現地入りし、取り組んだ仕事だった。
結局はその後のリーマンショックの影響や新興市場での不動産開発の難しさなどで、プロジェクト自体はSD Review賞をいただいたにも関わらず、ウワモノのお金が集まらず、未完のプロジェクトとなった。
ただ、この時に苦渋を舐めたことと、不動産開発についてのインスピレーションを得たことが今の自分につながっている。
「もし、自分自身があの時、クリエイティブな不動産事業者だったらどうしたか?」
この問いに応えるには、自分が不動産事業者になってみる必要があった。
その後はSD Review賞も手伝って、鹿島建設設計本部のコンペチームからオファーをいただくことになる。
コンペチーム後は都市計画グループという不動産開発とUrban Planningを国内外で実施するチームで厄介になった。
ご存知かもしれないがSD Review賞は鹿島のトップでもあり、鹿島出版会を盛り立ててきた鹿島昭一氏と槇文彦氏、そして代官山ヒルサイドテラスのオーナーである朝倉氏により立ち上げられた展覧会だ。
鹿島建設は、建設はもとより設計、不動産開発も行っていたため、上流から下流まで規模感のある不動産開発に現場レベルで関わらせていただき、大変貴重な経験をさせていただいたし、PFIやJVの現場レベルでの動きもなんとなく身につけることができた。
実は大手ゼネコンはバブル期には海外のデザイン的知識の獲得と開発スキームの導入のためにかなりの数の留学支援を出していた。僕の上司もその一人でGSDの卒業生だったため、いろいろとインスピレーションをいただいた。
だが、残念ながら僕の時期は社費留学などの制度がなかったため、奨学金を獲得する道しかなかったというのが正直なところ。
結果的にはフルブライトへの応募を通じて、想像以上に得られるものが多かった。フルブライトについては別投稿で詳しく書きます。
また、鹿島での仕事と平行して行っていたのが、スリランカ以来の不動産業へのリベンジだった。おかげで都内某所でいくつかの土地を仕込み、みずから銀行と交渉、設計をし、コンストラクション・マネジメントを行い、リーシングも行うといった、上流から下流へのオール・イン・ワン・パッケージを経験した。
最初のプロジェクトははっきり言って、毎日リスクと闘いながら寝られない日々が冗談じゃなく2年ほど続いたが、今となっては喉元過ぎればなんとやらである。
こういった事業性から建築や都市に対してアプローチする方法以外に、僕のもうひとつのテーマでもある非営利型の街づくり活動も続けていた。
石巻での集団移転コミュニティプロジェクトと拠点創出のためのプロジェクトだ。
http://kawanokami.com/
これらの活動がひとつとなって、時期も熟したと判断し、留学に踏み切った。
留学後のキャリアについて
ハーバード、不動産デザイン学科での授業内容やプログラム概要はすでに執筆した記事を参考いただくとして、では実際に学生たちはどのようなキャリアを歩むことになるのか、そして僕自身のキャリア形成についての考え方について記載しておきたい。
まず、不動産デザイン学科に来る学生はバックグラウンドが非常に多様で、ファイナンス出身、アトリエ出身、建設会社出身者がいることは書いた。
僕のクラスメートや前後の年代の卒業後キャリアは概ね下記
・デザインオリエンテッドのデベロッパー(Related Company, Gemdale, Hines...)
・デベロッパー/アーキテクト(DDG, ASH... )
・Private Equity(Morgan Stanley, Angelo Gordon, Blackstone, Goldman Sachs)
・アセット・マネージャー、ブローカー(Pension Fund, CBRE, JLL )
・コンサルタント(Boston Consulting..)
・起業(自国での家業、不動産業を拡大)
・その他テック系スタートアップ(とくに投資、ブロックチェーン関連)
この中でもPrivate Equityやアセット・マネージャーという業界が建築出身者、あるいは日本の不動産、ゼネコン出身者には馴染みがないのではないだろうか。
だが、実はこのキャリアが一番人気。
米国を中心とする不動産開発においては、じつはReal Estate Private Equityというファンドスキームが大きな役割を担っていることが事実であることを、恥ずかしながら僕もはじめて知った。
日本においてもリーマンショック前後にMorgan StanleyやFortressが様々な大型ホテルやビルを買収したことを覚えている方もいらっしゃるとは思うが、具体的に彼らのビジネスがどうなっていて、建築的Add Value、付加価値とどう関わっているのかを知れたのは不動産デザイン学科での授業のおかげである。
米国や香港を中心とする不動産投資のビジネスに透明性が高い市場では、Private Equityがスター・アーキテクトであるFrank GehryやRenzo Piano、安藤忠雄を雇って、攻め攻めのプロダクトを創り上げる事例もあるほど。そしてファームは少数精鋭のチームであることが多い。
僕自身が個人レベルで行っていた不動産オーナー件デザイナー業を国際的な文脈のもとにスケールするために欠けていたのは、このフレームワークだったのだと気付かされた。
では具体的にどうやって、このフレームワークを手に入れるか。
米国留学ではサマーインターン制度が非常に重要で、キャリア形成のための試行錯誤にとって貴重な機会でもある。もちろん大学の名前をレバレッジするなら、この機会である。
僕の場合は結果からいうとMorgan Stanley CapitalとAngelo GordonというReal Estate Private Equityで修行を積ませていただき、実際のディールにも関わることができ、自身の限界をかなりプッシュすることができた。サマーインターンのアプライ・プロセスや成果については別途。
この経験をもとに、卒業後の進路を現在固めているところである。
もちろんクラスメートも一流の企業でのサマーインターンを通して一回りも二回りも成長し、帰ってくる。そしてお互いに情報交換をし合うことで、さらに各業界でのキャリア形成についての理解を深めたり、人脈を厚くしてゆくことを留学生活後半に向けて続けてゆくことになる。
このPrivate Equityという手法をどう活用するか、構想はいろいろあるし、昨年から具体的に動きだしていることも含めて、また時期をみつつ発信してゆきたいと思う。
このブログを読んでくださって、何人かの方々からも問い合わせをいただいたので、まずは留学におけるキャリアについて、僕のケースとクラスメートなどのことをまとめておきたい。(個人の回想的になっているので、将来は削除するかもしれません。あしからず)
自身のキャリアについて
僕のバックグラウンドは純粋な建築設計で、出身地である高知で叔父が家業としてアトリエ系の事務所をしている。もちろん自宅も叔父が設計したので、ごくごく自然な流れで建築家を目指すようになった。
艸建築工房(ソウケンチクコウボウと読みます)
http://www.sou-af.jp/
早稲田大学の建築学科、大学院(石山修武研究室)へと進み、意匠系の道を歩みながらも、やはり家業として設計業の良し悪しも感じながらの進学であったため、自身で建築を通じた社会的インパクトと持続可能な業について、悶々と悩み試行錯誤を学外では繰り返していた。
ひとつの出逢いは、大学の先輩である佐藤オオキさんが立ち上げたデザインオフィスnendo。
http://www.nendo.jp/
nendoの黎明期に目白の小さな事務所で奮闘するオオキさんやその仲間からデザインビジネスについて、First Handな経験を得るとともに、自身もデザインビジネスが好きであることに気付いた瞬間だった。
そして「10年後にしたいことが今あるなら、迷わず今行動することの大切さを思い知った、もちろん日本で出来なければ、日本を出てもいい」ことを。
その後、自身のデザイン事務所を興して、名刺一枚のデザインからブランディング、CIを行ったり、建築やプロダクトのデザインを行うなどデザインビジネスの試行錯誤をくりかえしていた。
転換期だったのはスリランカでのリゾートホテルの設計。
スリランカでの不動産開発を行う日本人に連れられて、たまたま叔父と親交があった建築家Geoffrey Bawa氏とのご縁も手伝って、現地入りし、取り組んだ仕事だった。
結局はその後のリーマンショックの影響や新興市場での不動産開発の難しさなどで、プロジェクト自体はSD Review賞をいただいたにも関わらず、ウワモノのお金が集まらず、未完のプロジェクトとなった。
ただ、この時に苦渋を舐めたことと、不動産開発についてのインスピレーションを得たことが今の自分につながっている。
「もし、自分自身があの時、クリエイティブな不動産事業者だったらどうしたか?」
この問いに応えるには、自分が不動産事業者になってみる必要があった。
その後はSD Review賞も手伝って、鹿島建設設計本部のコンペチームからオファーをいただくことになる。
コンペチーム後は都市計画グループという不動産開発とUrban Planningを国内外で実施するチームで厄介になった。
ご存知かもしれないがSD Review賞は鹿島のトップでもあり、鹿島出版会を盛り立ててきた鹿島昭一氏と槇文彦氏、そして代官山ヒルサイドテラスのオーナーである朝倉氏により立ち上げられた展覧会だ。
鹿島建設は、建設はもとより設計、不動産開発も行っていたため、上流から下流まで規模感のある不動産開発に現場レベルで関わらせていただき、大変貴重な経験をさせていただいたし、PFIやJVの現場レベルでの動きもなんとなく身につけることができた。
実は大手ゼネコンはバブル期には海外のデザイン的知識の獲得と開発スキームの導入のためにかなりの数の留学支援を出していた。僕の上司もその一人でGSDの卒業生だったため、いろいろとインスピレーションをいただいた。
だが、残念ながら僕の時期は社費留学などの制度がなかったため、奨学金を獲得する道しかなかったというのが正直なところ。
結果的にはフルブライトへの応募を通じて、想像以上に得られるものが多かった。フルブライトについては別投稿で詳しく書きます。
また、鹿島での仕事と平行して行っていたのが、スリランカ以来の不動産業へのリベンジだった。おかげで都内某所でいくつかの土地を仕込み、みずから銀行と交渉、設計をし、コンストラクション・マネジメントを行い、リーシングも行うといった、上流から下流へのオール・イン・ワン・パッケージを経験した。
最初のプロジェクトははっきり言って、毎日リスクと闘いながら寝られない日々が冗談じゃなく2年ほど続いたが、今となっては喉元過ぎればなんとやらである。
こういった事業性から建築や都市に対してアプローチする方法以外に、僕のもうひとつのテーマでもある非営利型の街づくり活動も続けていた。
石巻での集団移転コミュニティプロジェクトと拠点創出のためのプロジェクトだ。
http://kawanokami.com/
これらの活動がひとつとなって、時期も熟したと判断し、留学に踏み切った。
留学後のキャリアについて
ハーバード、不動産デザイン学科での授業内容やプログラム概要はすでに執筆した記事を参考いただくとして、では実際に学生たちはどのようなキャリアを歩むことになるのか、そして僕自身のキャリア形成についての考え方について記載しておきたい。
まず、不動産デザイン学科に来る学生はバックグラウンドが非常に多様で、ファイナンス出身、アトリエ出身、建設会社出身者がいることは書いた。
僕のクラスメートや前後の年代の卒業後キャリアは概ね下記
・デザインオリエンテッドのデベロッパー(Related Company, Gemdale, Hines...)
・デベロッパー/アーキテクト(DDG, ASH... )
・Private Equity(Morgan Stanley, Angelo Gordon, Blackstone, Goldman Sachs)
・アセット・マネージャー、ブローカー(Pension Fund, CBRE, JLL )
・コンサルタント(Boston Consulting..)
・起業(自国での家業、不動産業を拡大)
・その他テック系スタートアップ(とくに投資、ブロックチェーン関連)
この中でもPrivate Equityやアセット・マネージャーという業界が建築出身者、あるいは日本の不動産、ゼネコン出身者には馴染みがないのではないだろうか。
だが、実はこのキャリアが一番人気。
米国を中心とする不動産開発においては、じつはReal Estate Private Equityというファンドスキームが大きな役割を担っていることが事実であることを、恥ずかしながら僕もはじめて知った。
日本においてもリーマンショック前後にMorgan StanleyやFortressが様々な大型ホテルやビルを買収したことを覚えている方もいらっしゃるとは思うが、具体的に彼らのビジネスがどうなっていて、建築的Add Value、付加価値とどう関わっているのかを知れたのは不動産デザイン学科での授業のおかげである。
米国や香港を中心とする不動産投資のビジネスに透明性が高い市場では、Private Equityがスター・アーキテクトであるFrank GehryやRenzo Piano、安藤忠雄を雇って、攻め攻めのプロダクトを創り上げる事例もあるほど。そしてファームは少数精鋭のチームであることが多い。
僕自身が個人レベルで行っていた不動産オーナー件デザイナー業を国際的な文脈のもとにスケールするために欠けていたのは、このフレームワークだったのだと気付かされた。
では具体的にどうやって、このフレームワークを手に入れるか。
米国留学ではサマーインターン制度が非常に重要で、キャリア形成のための試行錯誤にとって貴重な機会でもある。もちろん大学の名前をレバレッジするなら、この機会である。
僕の場合は結果からいうとMorgan Stanley CapitalとAngelo GordonというReal Estate Private Equityで修行を積ませていただき、実際のディールにも関わることができ、自身の限界をかなりプッシュすることができた。サマーインターンのアプライ・プロセスや成果については別途。
この経験をもとに、卒業後の進路を現在固めているところである。
もちろんクラスメートも一流の企業でのサマーインターンを通して一回りも二回りも成長し、帰ってくる。そしてお互いに情報交換をし合うことで、さらに各業界でのキャリア形成についての理解を深めたり、人脈を厚くしてゆくことを留学生活後半に向けて続けてゆくことになる。
このPrivate Equityという手法をどう活用するか、構想はいろいろあるし、昨年から具体的に動きだしていることも含めて、また時期をみつつ発信してゆきたいと思う。
2017年4月22日土曜日
2017 Spring, 2nd semester 授業紹介
1月の怒涛のアジアトレック、夏期インターンへの応募やインタビューなどに忙殺されているうちに、すっかりケンブリッジにも春が訪れてしまった。
若干振り返りながらの投稿となるが、2017, Spring Semester(2nd Semester)で僕が取っている授業を紹介しておきたい。
今学期はデザインスクール(GSD)の雰囲気や授業方式、基準にも慣れてきたこともあり、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の授業やケネディ政策大学院(HKS)との合同授業も取っている。
1) Advanced Real Estate Finance + Building and Leading Real Estate Enterprises and Entrepreneurship by Frank Apeseche
前学期のRick Peiserによる不動産ファイナンスと開発の基礎を一通りマスターした学生に提供されるアドバンストなクラスと、不動産やReal Estate Private Equity Groupを起業するための指南を行うクラス。
不動産デザイン学科のCo DirectorであるFrank Apesecheによる授業であり、Frankの実績ははっきりって目もくらむほど。バークシャーグループ(Private Equity)のCEOや不動産系ベンチャーのChairmanを歴任し、またREITの売却も行い、BlacksoneやGoldman Sachsとのパートナー事業も手がけている。
それだけに授業では、業界図を解りやすく、実話を交えて伝えてくれ、また実務での意思決定思考やリスク分析を披露してくれる。もちろんケーススタディも豊富で、ゲストスピーカーに至っては自身の事業パートナーを紹介してくれることから、生々しい話も伺える。
授業というよりは起業家育成塾のような雰囲気で、学生のコミットメント度合いも非常に高い。もちろん不動産事業計画(Pro Forma)が素早く作成できることが前提のうえで、投資判断を仰ぐAssignmentが多く出題される。
最終的には、Real Estate Enterpriseをつくるためのビジネスプランを策定するか、不動産ビジネスについてのリサーチペーパーを書くというFinal Projectを各人がつくることとなる。
僕自身、かねてよりスタートしていた自身の不動産ビジネスをどうスケールさせるかを明らかにしたかったこともあり、Office Hoursも含めてFrankからは徹底的に知識を吸収している。それでも溢れる溢れる。笑
それほど濃密な内容なのだ。実際、来期も聴講のみ行いながら、知識の総ざらいをしたいと思えるほどだ。
・AcquisitionとDisposition
・Cycle Cycle Cycle!
・Waterfallとよばれる、不動産投資体には欠かせない利益分配の仕組みづくり
・REITやInstitutional Investor
・Berkshire Methodと彼が名付ける投資判断のためのショートカット
・Private Equity 概略
・実際のディールでのIRRやMultiple
・企業の成長とOrganization
などなど、デザインサイド出身者からは、不動産の世界を支配している仕組みにどっぷりと浸かることができる。
自身の到達目標は、やはりスタートアップから事業がスケールする流れを習得し、業界の相関図やプレイヤーを把握することにある。
当然、Final ProjectもHow to Scale My Businessとしたい。
2) Public and Private Development by Jerold Kayden
こちら官民両方の観点から都市開発を紐解くHKSと共同で開催されるロングラン授業。すでに30年近く教鞭をとる人気教授のJerold Kaydenによる安定感のあるクラス。
彼はもともとは法律家出身で、官民両方の開発や都市政策に様々な形で関わっている。学生を巻き込むことと、冗談を飛ばすのが生きがいである。
この授業はGSDの不動産デザイン学科と都市計画学科(Master of Urban Planning)の学生の大半が取る授業であり、かつ都市政策や公共公益という趣旨からケネディ政策大学院の学生も取っている。
不動産開発に必要な不動産ファイナンスの基礎、つまりBack of Envelope計算から入り、都市開発やAffordable Housingの普及にインセンティブを与える都市政策を外観する。我々不動産デザイン学科の学生にとってはファイナンス・パートは安心して聞いていられる。これも前学期のRickのおかげである。
助手のKristenも素晴らしいフォローをしながら、学生全員がしっかりとついてこられるようにとても解りやすいReview Sessionを提供してくれる。
授業は座学、ディスカッション、ゲストレクチャー、共同プロジェクトが実にいい割合で組み合わされている。
ゲストスピーカーには、PublicサイドからはNew York City Planning Officeの実務家やChair、Torontoのウォーターフロント開発の責任者など錚々たる顔ぶれが揃う。Private側からはAffordable Housingにフォーカスしたユニークなデベロッパーや、PPPを行うデベロッパーなど社会に不動産開発を通じてどう貢献するかを実践している方々。
そして、このクラスのハイライトは何と言っても共同プロジェクトの「Land Disposition」だ。
Boston市が所有するFinancial Districtの実際の土地を払い下げるに際して、入札と評価のロールプレイを行う共同プロジェクトだ。
クラスをPublicチームとPrivateチームに分けて、Privateチーム(入札デベ)がプラン、事業計画、入札金額を盛り込んだプロポーザルをPublicチーム(評価側)に提出し、最終的にどのチームを落札者として選ぶかをロールプレイする。
チームはもちろん、学生のバックグラウンドを考慮してバランスよく組まれる。ファイナンス、都市デザイン、都市計画、公共政策というタレントからなるチーム
自身の目標としては、官民での都市開発のベストプラクティスについての理解を深めておきたい。またPublic Benefitを提供できる不動産開発とな何なのかについての視点を、官民両側の視点から考察しておきたい。
ネットワーク面でも都市計画やHKSの学生達との交流が楽しみである。
3) Real Estate Private Equity by Nori Gerardo Lietz
僕としてははじめてとなるハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の授業。
実はPrivate Equityの世界では泣く子も黙る名物教授であり、パワフルウーマンであるNori教授の超人気授業。
それだけに、HBS生以外のいわゆるクロス・レジスター(領域横断)を希望して授業を受ける学生はくじ引きによって授業を取れるかどうかが決定される。後で知ることになるのだけど、実はくじ引き以外にもレジュメを教授に前もって提出することになっているため、レジュメとともにクラスの多様性やバランス、バックグランドを考慮して学生が選ばれているようだ。
ありがたいことに、結構な倍率を勝ち抜いて、晴れて受講生となることができた。
HBSの授業はほぼ全てがケース・スタディ・メソッドに沿っており、HBS生のブログにも詳しいが、毎授業で実際のケースを読み込んだうえでのディスカッションが中心となる。さらに、不動産に関連したプライベート・エクイティの領域を扱うことから、不動産ファイナンス、Proformaと呼ばれる事業計画とリターン分析のモデルを検討したうえで、投資判断を話し合うことになることから、授業に挑むための準備にはかなりの時間と学習が必要だ。
そしてNoriの名物であるCold Call、いわゆる抜き打ち指名で発言を求められることが多々ある。例えば、日本の不良債権が話題になるケースであればもちろん日本人が当てられるし、Blackstoneなど実際の企業出身者がクラスにいる場合はその学生達からの意見をクラスに取り入れる意味でもCold Callされる。
これを切り抜けなければ減点されてしまうというルールもあるが、実際は教育としてもいい緊張感があり、非常に効果的だ。
そして、彼女の愛情のある導入のお陰で、笑いと痛快さがクラスを包む。
Nori教授は自身もプライベート・エクイティ投資会社を持っており、不動産投資アドバイザーとしても知らない人は業界にはいないくらいの有名人であるため、ゲストスピーカーの豪華なこと。そして、裏話も歯に衣着せぬものいいで伝えてくれる。
前学期はデベロッパーとして自分のビジネスをスケールすることくらいしかアイデアがなかったが、アジア・トレックで様々なプレイヤーに触れ、またNoriの授業を取ることができ、プライベート・エクイティを使った不動産開発を活用することも見えてきた。それだけ自分にとっては背伸びをしなくてはいけない環境であり、濃密でタフな授業であるが、開眼させてくれた授業でもある。
評価は授業へのコミットメント(参加)が50%であとはAssignmentとFinal Projectで50%の配分が基本。
Final Projectはずばり、Start Your Own Private Equityだ。二人組で投資家へのピッチブックを作り込み、最終的にプレゼンをするという実践的なFinal Projectだ。
この授業をSurviveすることができれば、大きな自信となるとともに、自分のネットワークも広がるだろうことを実感する日々。
目標としては、HBSのケース・メソッドに慣れたうえで、投資判断をできるようになること。そしてピッチブックを英語で作成できるようになること。また、PEの世界のプレイヤーや戦略について少しでも見識を身につけること。
4) Market Analysis and Urban Economics by Raymond Torto
不動産のマクロとミクロのマーケット分析と経済を基礎から学ぶ授業。不動産デザイン学科長年の名物教授であり、CBREの元、伝説的リサーチャーであるRay Torto教授による授業。
もう御年75歳とのことと、大病を患われたこと、また独特のボストン訛りの英語から、少々聞き取りづらいのが難点だが、不動産マーケットを知り尽くしたRayの教えは示唆に富む。そして普遍的な法則について核心をつく授業が展開される。
授業では、実際にCBRE EAやRCA等のデータ分析ソースを使用しながら、自分でマーケットを分析する。
ボストンやニューヨーク、サンフランシスコは昨今不動産が高値を更新して活況を呈しているマーケットだが、今後の予測はそう明るいものでもなさそうだ。かと言って毎年家賃や学費が値上げされる米国のファンダメンタルズの強さからすると、まだまだ海外からの資本が投入されている。
今後、不動産マーケットはどうなってゆくのか、人は何処に住まうのか。Live-Work-Playが実現できる場所や雇用が創出されつづける場所はどこなのか。様々な視点がリサーチャーの揺るぎない理論のもとに展開される。
はっきりいって、この理論を学ばずして、いままで不動産投資をしてきたことにちょっとゾッとする瞬間もあった。このマーケット分析手法の基礎を体得すれば、今後も一生つかえる知恵だと思う。
到達目標としては、マーケット分析をフェアな目で行える技量を身につけること。世界の不動産業界の趨勢であるCBREを始めとするソースの活用に慣れること。
以上が今期の授業紹介。非常に濃い内容と新しいチャレンジを含むため、やりがいを感じながらもついてゆけるのだろうかと不安にもなる。が、領域横断的で実践的な体験こそ、ハーバードの得意とするところなので、楽しみながら挑んでゆきたい。
前学期のRick Peiserによる不動産ファイナンスと開発の基礎を一通りマスターした学生に提供されるアドバンストなクラスと、不動産やReal Estate Private Equity Groupを起業するための指南を行うクラス。
不動産デザイン学科のCo DirectorであるFrank Apesecheによる授業であり、Frankの実績ははっきりって目もくらむほど。バークシャーグループ(Private Equity)のCEOや不動産系ベンチャーのChairmanを歴任し、またREITの売却も行い、BlacksoneやGoldman Sachsとのパートナー事業も手がけている。
それだけに授業では、業界図を解りやすく、実話を交えて伝えてくれ、また実務での意思決定思考やリスク分析を披露してくれる。もちろんケーススタディも豊富で、ゲストスピーカーに至っては自身の事業パートナーを紹介してくれることから、生々しい話も伺える。
授業というよりは起業家育成塾のような雰囲気で、学生のコミットメント度合いも非常に高い。もちろん不動産事業計画(Pro Forma)が素早く作成できることが前提のうえで、投資判断を仰ぐAssignmentが多く出題される。
最終的には、Real Estate Enterpriseをつくるためのビジネスプランを策定するか、不動産ビジネスについてのリサーチペーパーを書くというFinal Projectを各人がつくることとなる。
僕自身、かねてよりスタートしていた自身の不動産ビジネスをどうスケールさせるかを明らかにしたかったこともあり、Office Hoursも含めてFrankからは徹底的に知識を吸収している。それでも溢れる溢れる。笑
それほど濃密な内容なのだ。実際、来期も聴講のみ行いながら、知識の総ざらいをしたいと思えるほどだ。
・AcquisitionとDisposition
・Cycle Cycle Cycle!
・Waterfallとよばれる、不動産投資体には欠かせない利益分配の仕組みづくり
・REITやInstitutional Investor
・Berkshire Methodと彼が名付ける投資判断のためのショートカット
・Private Equity 概略
・実際のディールでのIRRやMultiple
・企業の成長とOrganization
などなど、デザインサイド出身者からは、不動産の世界を支配している仕組みにどっぷりと浸かることができる。
自身の到達目標は、やはりスタートアップから事業がスケールする流れを習得し、業界の相関図やプレイヤーを把握することにある。
当然、Final ProjectもHow to Scale My Businessとしたい。
自身のディールについて惜しげもなく語るFrank Apeseche教授 |
2) Public and Private Development by Jerold Kayden
こちら官民両方の観点から都市開発を紐解くHKSと共同で開催されるロングラン授業。すでに30年近く教鞭をとる人気教授のJerold Kaydenによる安定感のあるクラス。
彼はもともとは法律家出身で、官民両方の開発や都市政策に様々な形で関わっている。学生を巻き込むことと、冗談を飛ばすのが生きがいである。
この授業はGSDの不動産デザイン学科と都市計画学科(Master of Urban Planning)の学生の大半が取る授業であり、かつ都市政策や公共公益という趣旨からケネディ政策大学院の学生も取っている。
不動産開発に必要な不動産ファイナンスの基礎、つまりBack of Envelope計算から入り、都市開発やAffordable Housingの普及にインセンティブを与える都市政策を外観する。我々不動産デザイン学科の学生にとってはファイナンス・パートは安心して聞いていられる。これも前学期のRickのおかげである。
助手のKristenも素晴らしいフォローをしながら、学生全員がしっかりとついてこられるようにとても解りやすいReview Sessionを提供してくれる。
授業は座学、ディスカッション、ゲストレクチャー、共同プロジェクトが実にいい割合で組み合わされている。
ゲストスピーカーには、PublicサイドからはNew York City Planning Officeの実務家やChair、Torontoのウォーターフロント開発の責任者など錚々たる顔ぶれが揃う。Private側からはAffordable Housingにフォーカスしたユニークなデベロッパーや、PPPを行うデベロッパーなど社会に不動産開発を通じてどう貢献するかを実践している方々。
そして、このクラスのハイライトは何と言っても共同プロジェクトの「Land Disposition」だ。
Boston市が所有するFinancial Districtの実際の土地を払い下げるに際して、入札と評価のロールプレイを行う共同プロジェクトだ。
クラスをPublicチームとPrivateチームに分けて、Privateチーム(入札デベ)がプラン、事業計画、入札金額を盛り込んだプロポーザルをPublicチーム(評価側)に提出し、最終的にどのチームを落札者として選ぶかをロールプレイする。
チームはもちろん、学生のバックグラウンドを考慮してバランスよく組まれる。ファイナンス、都市デザイン、都市計画、公共政策というタレントからなるチーム
自身の目標としては、官民での都市開発のベストプラクティスについての理解を深めておきたい。またPublic Benefitを提供できる不動産開発とな何なのかについての視点を、官民両側の視点から考察しておきたい。
ネットワーク面でも都市計画やHKSの学生達との交流が楽しみである。
ゲストスピーカーとKayden教授 |
3) Real Estate Private Equity by Nori Gerardo Lietz
僕としてははじめてとなるハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の授業。
実はPrivate Equityの世界では泣く子も黙る名物教授であり、パワフルウーマンであるNori教授の超人気授業。
それだけに、HBS生以外のいわゆるクロス・レジスター(領域横断)を希望して授業を受ける学生はくじ引きによって授業を取れるかどうかが決定される。後で知ることになるのだけど、実はくじ引き以外にもレジュメを教授に前もって提出することになっているため、レジュメとともにクラスの多様性やバランス、バックグランドを考慮して学生が選ばれているようだ。
ありがたいことに、結構な倍率を勝ち抜いて、晴れて受講生となることができた。
HBSの授業はほぼ全てがケース・スタディ・メソッドに沿っており、HBS生のブログにも詳しいが、毎授業で実際のケースを読み込んだうえでのディスカッションが中心となる。さらに、不動産に関連したプライベート・エクイティの領域を扱うことから、不動産ファイナンス、Proformaと呼ばれる事業計画とリターン分析のモデルを検討したうえで、投資判断を話し合うことになることから、授業に挑むための準備にはかなりの時間と学習が必要だ。
そしてNoriの名物であるCold Call、いわゆる抜き打ち指名で発言を求められることが多々ある。例えば、日本の不良債権が話題になるケースであればもちろん日本人が当てられるし、Blackstoneなど実際の企業出身者がクラスにいる場合はその学生達からの意見をクラスに取り入れる意味でもCold Callされる。
これを切り抜けなければ減点されてしまうというルールもあるが、実際は教育としてもいい緊張感があり、非常に効果的だ。
そして、彼女の愛情のある導入のお陰で、笑いと痛快さがクラスを包む。
Nori教授は自身もプライベート・エクイティ投資会社を持っており、不動産投資アドバイザーとしても知らない人は業界にはいないくらいの有名人であるため、ゲストスピーカーの豪華なこと。そして、裏話も歯に衣着せぬものいいで伝えてくれる。
前学期はデベロッパーとして自分のビジネスをスケールすることくらいしかアイデアがなかったが、アジア・トレックで様々なプレイヤーに触れ、またNoriの授業を取ることができ、プライベート・エクイティを使った不動産開発を活用することも見えてきた。それだけ自分にとっては背伸びをしなくてはいけない環境であり、濃密でタフな授業であるが、開眼させてくれた授業でもある。
評価は授業へのコミットメント(参加)が50%であとはAssignmentとFinal Projectで50%の配分が基本。
Final Projectはずばり、Start Your Own Private Equityだ。二人組で投資家へのピッチブックを作り込み、最終的にプレゼンをするという実践的なFinal Projectだ。
この授業をSurviveすることができれば、大きな自信となるとともに、自分のネットワークも広がるだろうことを実感する日々。
目標としては、HBSのケース・メソッドに慣れたうえで、投資判断をできるようになること。そしてピッチブックを英語で作成できるようになること。また、PEの世界のプレイヤーや戦略について少しでも見識を身につけること。
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4) Market Analysis and Urban Economics by Raymond Torto
不動産のマクロとミクロのマーケット分析と経済を基礎から学ぶ授業。不動産デザイン学科長年の名物教授であり、CBREの元、伝説的リサーチャーであるRay Torto教授による授業。
もう御年75歳とのことと、大病を患われたこと、また独特のボストン訛りの英語から、少々聞き取りづらいのが難点だが、不動産マーケットを知り尽くしたRayの教えは示唆に富む。そして普遍的な法則について核心をつく授業が展開される。
授業では、実際にCBRE EAやRCA等のデータ分析ソースを使用しながら、自分でマーケットを分析する。
ボストンやニューヨーク、サンフランシスコは昨今不動産が高値を更新して活況を呈しているマーケットだが、今後の予測はそう明るいものでもなさそうだ。かと言って毎年家賃や学費が値上げされる米国のファンダメンタルズの強さからすると、まだまだ海外からの資本が投入されている。
今後、不動産マーケットはどうなってゆくのか、人は何処に住まうのか。Live-Work-Playが実現できる場所や雇用が創出されつづける場所はどこなのか。様々な視点がリサーチャーの揺るぎない理論のもとに展開される。
はっきりいって、この理論を学ばずして、いままで不動産投資をしてきたことにちょっとゾッとする瞬間もあった。このマーケット分析手法の基礎を体得すれば、今後も一生つかえる知恵だと思う。
到達目標としては、マーケット分析をフェアな目で行える技量を身につけること。世界の不動産業界の趨勢であるCBREを始めとするソースの活用に慣れること。
コメンテーターとしても活躍したRay Torto教授 |
家賃相場と空室率をあらわすサイクル |
以上が今期の授業紹介。非常に濃い内容と新しいチャレンジを含むため、やりがいを感じながらもついてゆけるのだろうかと不安にもなる。が、領域横断的で実践的な体験こそ、ハーバードの得意とするところなので、楽しみながら挑んでゆきたい。
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